12/28

10:00

朝早くから日の出を見た俺と夢衣はもうすでに眠気が来ている。


けれど、夢衣が行きたいと言った岩盤浴へ無理に行って体を温めていると隣で横になっていた夢衣が寝息を立て始めた。


来虎「夢衣、起きて。こんなとこで寝たら危ないよ。」


夢衣「…ねむいよぉ。」


と、夢衣は目を瞑ったまま現実世界へ戻るのを拒絶する。


来虎「とりあえず、ここ出て休憩所で寝よう?さすがに俺も限界来てる。」


昨日は酒は飲まなかったけれど、終電間際までカラオケにいたし、そのまま家で連ドラを見たりして過ごしたから睡眠時間がいつもより少なすぎる。


夢衣「じゃあほてるいこ?」


寝ぼけながらも、まだそんなことを言う夢衣の執念とベッドがある魅力に負けた俺は体が冷めないうちに近場のホテルに入り、2人してすぐにベッドに飛び込む。


夢衣「寒かったぁ…。」


来虎「そうだね。ちょっと暖房高めに設定しとこうか。」


俺がベッド脇にあったリモコンで空調の調節をしていると、夢衣は俺の胸に乗って枕にした。


夢衣「…落ち着く。」


来虎「そう?寝にくくない?」


夢衣「ちょうど私にぴったり。」


と言って、夢衣は俺に抱きつき顔を埋める。


その夢衣の鼻息が俺の胸を温め、その温もりがだんだんと服を伝って広がっていき心地いい温もりを感じてそのまま寝そうなると夢衣が俺の胸から顔を離した。


夢衣「来虎も私のこと抱きしめて。」


来虎「するからもう寝よ。」


俺は胸上にいる夢衣の背中に両手を置き、また眠りに入ろうとすると夢衣が俺の手を自分の服の中へ入れ始める。


来虎「ちょっと…、何してんの…。」


夢衣「ここ、触ってて。落ち着くの。」


と、夢衣は自分の脇腹にタバコの吸殻で押し当てて傷つけてしまった火傷の傷に俺の指を置く。


けれど、この間よりも凹凸が少なくてちゃんとケアしてることが分かった。


来虎「…増えてないね。しかも、柔らかくなってる。」


夢衣「皮膚科とタンパク質でここまでなったよ。」


来虎「よかった。知らなかったら服のシワかと思うくらいだよ。」


夢衣「けど、完璧に消えるのはもっと時間かかるって。」


来虎「肌細胞活性化させてこう。」


夢衣「それだったらー…」


来虎「ダメ。触んないで。」


俺は夢衣の手が俺の腹より下に行くのが目に見えてすぐに止める。


夢衣「触るのもダメなの?」


来虎「普通、ダメだろって…。」


夢衣「他の人は触れって言うのに…。」


…痛い。


やっぱり、心臓がおかしい。


どうにも、変なタイミングで痛みが走る。


最近そんなに不摂生した覚えがない俺はなんの手立てもなくて、困り果てていると夢衣は掴まれていた自分の手を俺の胸元に持って行き、心臓がある胸側のブルを1度突いた。


夢衣「…ここ、好き?」


来虎「なにやってんの…。」


夢衣「来虎は何人と付き合ったことあるの?」


と、夢衣はただ少しくすぐったいだけの指遊びをしながらそう聞いてきた。


来虎「いない。」


夢衣「したことある人は?」


来虎「恋人いたことないんだからないよ。」


俺がそう言うと夢衣はとても驚いた顔でこちらを見て指遊びをやめた。


夢衣「え…、本当?」


来虎「嘘ついてどうするんだよ。逆にこんな嘘つくメリットを教えてほしいよ。」


俺は目を瞑り、夢衣が落ち着くと言った火傷の跡を親指で撫でながら眠ろうとすると夢衣の初めて聞く声が聞こえて驚きで目が覚める。


夢衣「…ごめん。」


来虎「触るのやめとく…。けど、くっつきながら寝よう。」


俺はずっと寂しげな夢衣を抱き寄せて、夜一緒に行くことにした七海がこの間から働き始めた仕事場のお店の評価を見ながら眠りについた。



環流 虹向/ココのさきには

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