第4話 女子会(二人だけど)
1
「最近彼氏と会話が続かない?」
「…………………うんうん(こくこく)」
「いや、そもそも会話できてたの、あれ」
「…………………(がーん)」
小鳥遊沙也加(たかなしさやか)は少し変わった友達がいる。
無口で無表情の彼女――――荒井理津には幼馴染の彼氏がいて、それはもうラブラブな関係を築いて
いるらしいのだが。
どうにも私が思うに、普通のカップルのそれとは一線を画している気がするのだ。
最初に話したのは一年生の頃。
同じクラスになった際に彼女の目を引く雰囲気と物珍しさが気になって、つい話しかけてしまった。
「私は理津の彼氏の方がヤバイと思うけど…………」
「…………………………?」
私の言葉の意味がわからなかったのか、彼女は首を傾げる。
「別に悪く言ったわけじゃないけど、二人のコミュニケーションは常人のそれとは違う気がする?みたいな」
「…………………おお」
「いや、褒めてはないよ?」
いくらカップル同士とはいえ、理津の彼氏は殆ど言葉を交わさずに会話しているわけで………長年の成せる業なのか、それとも何かコツがあるのか。
どっちにしたって、私にはできない。
「でもそう考えると、理津は私とか他の人と話す時の方が喋る気がするけど、それはどうして?」
私が何の気なしに聞くと理津は少し俯きがちに答えた。
確かに、彼女は普段から無口だけれど彼氏と喋るときの方が数段口数が少ないように感じる。普通安心のできる相手と話している時の方が口数は増えると思うのだが。
「それは…………」
「それは?」
「…………恥ずかしい、から」
(かー!何て可愛いのこの彼女!私がもらってあげたいくらい!)
私の脳内、大歓喜である。
自分の性格は理解しているし、とても万人受けするタイプではないのだ。
口調は辛口だし、所々に棘がある。
けれど、彼女に対してだけはどうにも評価が激甘になってしまう。
「でも、のぞみも変わらない。一年生の時から」
「……………………?」
「ほら、一年生の最初。仮入部期間の時、覚えてる?男子なんだから運動部にでも入ればいいのに、理津と同じところに入るって聞かなくて…………」
運動自体が禁止に近い理津は、入るとするなら校内部活になる。
「あいつも強情というか、人の話聞かないわよねー」
「でもそれだと望に悪いから…………」
「うんうん。それで、茶道部に入ったんでしょ?」
女子茶道部。
部員女子率100%の部活で、雰囲気は同性同士和気藹々としており評判も良い。
「でも、まさか望も茶道部に入るって言った時はびっくりした」
茶道部の先輩方も困ったことだろう。いきなり女子しか入れないはずの部活に男子の、それも一年生が入りたいと言ってきたのだから。
「同級生の間でも話題になったのよ?噂が噂を呼んで最終的には一年生が堂々と茶道部の三年生をナンパしたみたいなことになってたわね」
結局のところ女子の部活に男子は入れないってことになって、同じ系列の文芸部に入って、放課後は一緒に帰っているらしいけど。
「でも、本当は彼女がいじめられないか心配な幼馴染の彼氏が、一緒に居たかっただけなのよねぇ」
「…………………(こく)」
理津が恥ずかしそうに俯く。
(か、可愛い…………!!!!!)
なにこの可愛い生き物は!?この娘を独り占めできる望が羨ましい!
「それで?理津なりに何か考えていることあるの?こう………より仲を深めるみたいな?」
沙也加にすれば、そんな心配はしなくて良いと思うのだが、彼女なりに思うところがあるのだろう。
「…………………うーむ」
理津は腕を組んで考える人みたいなポーズをする。
そして少し間を開けて、
「…………初めてを」
「初めてを?」
「…………あげる」
「あげ………はあ!?だめだめだめ、ちょっと待った!そんな暴挙容認したら、私が本人から怒られるから!」
突然の爆弾に沙也加は立ち上がって制止する。
「…………………大丈夫」
「なにがっ!?」
2
「はあ、はあ、はあ…………」
つ、疲れた。
何とか理津に踏みとどまってもらうよう説得したけれど、納得してはいないみたい。
「まったく、それじゃあ二人は普段どんなことしているの!?」
今までは望の奥手さ加減から大丈夫だろうと高を括っていたけれど、ころ二人案外とんでもないところまで進んじゃっているの?
「…………………(かくかくしかじか)?」
説明中。
「ほんとに、何やっているの…………」
「…………………?」
「ええ、おかしいわよ。少なくとも私の知っているカップルの形とは離れているわね」
私の見聞が狭いって考えることもできるけど。
「第一下着姿を送るなんて、絶対ダメ。そんなの彼氏彼女でもなきゃ、痴女よ痴女」
「…………っ!?」
「なんでそんな驚いた、みたいな反応」
「……………………ふん!(でも、彼氏彼女だし大丈夫!の表情)」
「いやいやいや全然だめだからね!?覚悟決めたみたいな顔してもだめ!」
「ったく何で性に対しては積極的になれるのかしら」
沙也加は頬杖を付きながら、ため息交じりに言う。
「それは…………」
「それは?」
「…………教えない、二人だけの秘密だから」
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