1.4 陸上部の仲間達

 授業が終わり部活棟へ向かう。

 建物の構造は教室棟と同じだ。

 二階の男子陸上部の部室の戸を「こんにちわ」と開ける。

 帰ってくる声は意外と少なく、まだ五人しか居なかった。

 同い年の人は副部長をやっている松田、長身短髪で見た目からアスリートっぽい。もう一人でかいのが小沢、松田よりも身長はあるし、ぶつかったらはじき返されそうな感じ。

 あと大島、この人はやや身長低めで、あと黄色っぽい眼をしている。

 能力者は色々な色の人が多いけどこの色はめずらしいかな。

 それに一年生が二人居た。

 みんなで女子の話をしているようだったけど話には入らず、軽く食事をとることにした。

 そうしていると小沢がちょっかいを出してきた。

「隼、黙ってないで何か話せよ」

「あーとか」

「隼、それ話って言わないから」

 すかさず松田がつっこんできた。

「イーとか言わないように」

 大島に言葉を奪われた。

 そんなとき、ちょうどいいタイミングで倉瀬が来た。

 やや小柄で容姿に少し幼い印象を受ける。

「勝負だ」

 さっそく小沢が挑む。

 倉瀬はトランプが強い。

 たびたび僕もやるがとにかく強い。

 特にディーラーになると、ほとんど負けていないらしい。

 間違いなく何かやっているとは思うのだが、まったくわからない。

 何か特殊な能力を持っているのかもしれない。

 いつもにこにこしていているが謎の人物。


 一足先に競技場へ行くことにした。

 芝生に寝っ転がって、雲の動きを眺める。

 十七時。

 だいぶ日が傾いて、影が伸びてきた。

 いい時間だ。

 しかし、そんな気持ちよさを破る声が聞こえてきた。

 女子陸上部が現れた。

 僕と同じ生徒会会計の方条飛鳥と生徒会副会長の神代綺(こうじろあや)が向かってくる。

 方条は高めの身長、緩く編まれた尻あたりまである後ろ髪を軽くなびかせながら近寄り、寝ている僕の顔をのぞき込むように腰を少し折って、「立て」と首を動かす仕草と目で命令してきた。

 ひとまず上半身だけ起こす。

「まーた、こんな所で寝て。

 つまずいて乙女の柔肌に傷を付けたらどうするつもり」

「競技場のど真ん中で誰が人につまずくんだよ」

「普通はね。

 あなた存在感ないのよ」

「そんなことはない」

 微笑んでみている神代に視線を向けて、同意を求めると「そうですね」と笑みをくずさずこたえた。

 身長は方条と同じくらい。

 少し長めの髪を運動の時は束ねている。

 笑みには人気があるらしい。

「綺、かばわないの。

 とにかく部員に怪我させないでよ」

 二人は戻っていった。

 それにしても、くそっ。

 本気で言っているのか?

 とりあえず移動することにした。

 眺めていると変質者呼ばわりされかねないんで、ストレッチでもやって時間を過ごすことにした。

 そのうちみんなが集まってきて、練習が始まった。

 今日は軽くインターバル走をやって終わりにすることにした。


 家に着くと二十時。

 食事を食べて、風呂に入って、テレビを眺める。

 そして今日借りてきた本を少し読むことにした。

 カバンを覗くと、誰が入れたのか図書館の椅子の上にあった革の本が中にあった。 だいぶ古い感じがするが、それほど痛んでいる様子もない。

 美術館などにある稀覯本のような感じだ。

 なぜか、ちょっと不思議な感じがした。

 開いてみると予想に反して見たこともない字で書かれていた。

 当たり前といえば当たり前かもしれないが。

 おおかた水原の仕業だろうと思い、この本はまた明日どうにかするとして読もうと思っていた本を読んで寝ることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る