1.3 巨大図書館イグドラシルと古書
本をカウンターに返し、久々に中央図書館へ行くことを思いついた。
「何で隼に付き合って今度はわざわざ中央図書館まで行かなきゃいけないんだあ。
学校の図書館で事は足りるだろ?」
水原が動く歩道の手すりに身を任せて文句を言った。
「教室にいても、どうせ寝てるだけだろ」
「失礼なこと言うな」
水原は強く否定してきた。
「精神統一か?
同じ事じゃん」
そして中央図書館に着いた。
近くまで来るとやたらでかい。
十二階建てと言ったが、各階の天井が5メートル以上あるため、そうは見えない。全体的な外観は立方体に尖塔がついた感じだ。
尖塔の先端は地上200メートル以上になるらしい。
イグドラの中で一番高く目立つ建物。
150メートルの位置に展望室があるが、許可を取らなくては行けない。
休み時間は残り三十分しかなかったのに、ここにくるのに十分以上かかってしまった。
少し急いで回転ドアを通り、駅の自動改札機のような機械に学生証を通して入館する。
中央図書館は学生の利用者が少ない。
地元住民は無料で貸し出しされているし、イグドラシルの施設だ。
元々この中央図書館はそこの研究員のために建てられた施設。
入り口の様子は広々とした高級リゾートホテルのような雰囲気。
いくつもある椅子やテーブルを使って談話をしたり、ミーティングをしている人たちが多数いる。
あと目に付くのが階段やエスカレーター、エレベーター、螺旋階段がいくつも並んでいる。
エスカレーターと階段が集中しているこの南口は二階まで吹き抜けになっているため特に大きさを感じる。
エスカレーターと中心部にある一方通行の螺旋階段を上って外国小説書架の三階へ急いで、適当な本を探し、貸し出し登録をする。
学生証と本のコードを読み取らせればOK。
登録が終わり、視線を落とすと誰かが忘れていったのか、革のようなので装丁されたずいぶん古い感じの本が椅子の上に置いてあった。
気になって周囲を見渡し、手に取ろうとすると
「毎回思うんだけど、すごい広さと本の数だな」
水原が書棚を眺めながら言った。
「そうだな」
各フロア格子状に二層があり、この外国小説のエリアだけで高校の図書館より蔵書が多い。
そういう階が十階ある。
地下にも何階かあるらしい。
蔵書数は想像もつかない。
革の本はやっぱりほっといた。
中央図書館を出て、動く歩道を早歩きでH―2へ向かう。
最後の方は軽く走ることになった。
「だからイヤだっていったんだよ」
水原が息を荒げて愚痴を言った。
「あと500メートルくらい余裕だろ」
「そんなわけあるか。
お前と違って、走るのが当たり前じゃないんだよ」
「じゃ、半分の距離を倍の早さで走るか?」
「何の解決にもならないし」
教室に着くと、ちょうどベルが鳴った。
「毎日の、ことだけに、時間あわせは、流石だな」
水原が絶え絶えに言った。
本当に疲れているようだ。
嫌味で言ったようだが「当然」と言うと、あきれたようにため息をついた。
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