繋がる
ボールチェーンが好きだ。
……と言い出すと、いったいどうしたという顔で見られる。
わかる。
よくわかる。
けれど、あの着脱は癖になる。
カチッ、カチッと、はめてはずす動作は、無限にやっていられる。
無限プチプチとか、無限枝豆とか、あんな感じの楽しさだ。
だから、私は暇さえあれば、ボールチェーンの両端を、カチッ、カチッとくっつけている。
はめて外し。
外してははめる。
ついには寝ても覚めてもボールチェーンのことばかり考えるようになって、チェーンを握りながら夢の世界へと旅立つようになった。
その日も私は、セルフ無限ボールチェーンをやっていた。
カチッ、カチッ。
心が落ち着く。手遊びや、一種のルーティーンのようなものだ。
カチッ、カチッ……
遊んでいると、ゆっくりと瞼が重くなる。
それでも、指先はつなげて、外すのをやめない。
カチッ、カチッ。
カチャ。
――ん? と思ったときには、なにかがボールチェーンの先に繋がっていた。
ゆめううつの意識なので、おかしいな、奇妙だなとは思うけれど、思考に霞がかかっていて、それ以上は考えられない。
ただ、留め具にはなにかがくっ付いているのに、ボールのほうはだらんと手の中に下がっているという事実だけがわかる。
そっと、指先を留め具に這わせる。
柔らかく、生暖かい感触が返ってくる。
肉。
肉のひも。
そういうなにか。
もう半分以上眠っているので、そういうこともあるかと納得してしまっている。
それでも、癖になっているので、留め具をはずそうと指先が動く。
ぐちゃりという感触。
肉のひもが、ビクンと跳ねた。
まるっきり、動物が痛みを感じて反応したように。
ぐっと引っ張られるボールチェーン。
するすると手の中から抜けていきそうになって、その喪失感でようやく目を覚ます。
反射的にボールチェーンを握り混もうとするが、それはすり抜けてしまい――
バッと布団をめくる。
銀色のナニカが、プツンと足の親指へと消えていくのが見えた。
……以来私は、歩くたび右足の親指に痛みを感じるようになった。
けれど病院に行っても、理由はわからない。
ボールチェーンが入っているのだと、私だけが確信しているが。
しかしあのとき、金具はいったいなにと、繋がったのだろうか――
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