なにもできない陰キャな俺でもゲームの才能があればこの世の全て手に入れられますか?

黒米

何も出来ない俺

パァン!パァン!と銃声音が鳴り響く。画面内にいる自分のキャラが戦場を縦横無尽に駆け回り刹那、自分から放たれた銃弾が相手のキャラの眉間を貫く。その一瞬の出来事に騒がしい会場が静まった。


「なんと…なんと…eスポーツ世界大会fps部門優勝者は日本代表の準夜じゅんや選手だあああああああああああ!大会7連覇ですっっ!17歳にして彼を止められるのは誰も居ないのだろうか!」


ワアアアアアアと実況の声と同時に再び会場が騒がしくなる。そう、俺はまた優勝した。ゲーマーの頂点を競う大会と呼ばれるeスポーツ世界大会で。






………………


「優勝おめでとー!!」


「うるせーよ」


優勝から数日後あらゆるインタビューから振り切り俺は帰宅していた。帰宅早々騒がしいこの女は「あさひ」なぜか幼い頃から俺と一緒にいる。



「何で俺の家いるんだよ」


「えー、いーじゃーん準夜のお母さんから許可もらってるんだし。そういえば、もうすぐご飯できるから待っててー!」


「あのなあ、確かに俺の母は海外に出張行ってるけどな…」


「はいはい。後これご飯っっっ!」


「うおおおおっっ」



テーブルに飯を置こうとした瞬間、あさひは足を滑らせ自分の方へ倒れてくる。当然自分も彼女を支えきれず、共に床に倒れる。



「いったあ〜!準夜大丈b…ってきゃあ!?」


「!?」



倒れてあさひを支えようとした手が彼女の胸を掴んでいた。ノーブラだったのだろうか手に柔らかな感触が残っている。



「ほんとにすまん!わざとじゃない!」


「わ、分かってるよ!」


「……ごめん!」



「…別に準夜ならいいかな…」


「は?」


「いや!なんでもない!今のなし!ほんとに!」


「いや!俺はあさひのでよかったな…」



何を言ってるんだ俺は頭がおかしいのか?と自分に疑問を思いつつ考えていることとは逆の言葉が不意に出る。



「俺、あさひのことすきかも」


「!?準夜私も…準夜のこと好き…」





…………

それから俺たちは付き合い始めた。


「ねえ!準夜あそこに観覧車あるよ!一緒に乗ろ!」

「はいはい」


「ねえねえ!このポップコーン美味しいから一緒に食べよ!」


「準夜ゲーム強すぎ〜勝てないよ〜」




あさひといた時間はとても楽しく絶対に忘れられない時間だった。




「そういえば、なぜあさひは俺の事好きになったんだ?」


「私ね、小さい頃は一人ぼっちだったの。引っ越してきたから友達もいなくて勉強勉強ってお母さんお父さんどっちも厳しくて、心が壊れそうだった。」



彼女は少しゆっくりと言葉を続ける



「そしたらさ、1人の男の子が遊びゲームに誘ってくれたんだその子とってもゲームが上手くて、プロになれるんじゃないかってその頃から思ってた。誘ってくれたのが嬉しくて私もその子とゲームしてたけど、1回も勝ったこと無かったなー(笑)でもその子ゲーム以外何も出来ないんだよ?運動も勉強も全然、友達も少ないし。」


「それでさ、負けたのが悔しくて毎日その子に挑んでた。それでも勝てなかったけどね、その子と同じ時間を一緒に過ごす度にいつの間にか好きになってた。それが君なんだよ。準夜」


「そっか、ゲームしか出来なくてもいいことあるんだなって。」


自分の目頭が熱くなる。



「俺も一緒に過ごせて良かったなって…」

どれくらい涙を流したのだろうか、その日はもう数えきれないくらい泣いた。






………………


「eスポーツ世界大会FPS部門優勝者はまたまたこの男準夜選手だああああああああぁぁぁ!もう誰も彼を越えられないのか!?」


「ヘイ、ジュンヤキミ強すぎだよ。何かキメてんのかかい?(笑)」


「センキュー、マークまた、来年戦おう。」



あれから1年後再び世界の頂点に立った。この男はマーク世界大会前回2位のFPS大国のアメリカで、最強と呼ばれている男だ。2年前からの知り合いだ。



「この後、カジノでもいかないか?ジュンヤ」


「悪いねマーク、予定があるんだ。」


「アー、ガールフレンドかい?君も忙しいね。」


「はいはい、そうだよ」



茶化すマークを後に足の向きを家に変える。あさひは待っているだろうか。



「ただいまー。」




………

返事がない。いつもなら隣に響くくらいうるさく返事が帰ってくるのだが。


辺り一面を探してみる。おかしい、誰もいない。焦る自分を落ち着かせるように、携帯の通知を見ると、あさひから連絡が来ている。


[準夜の大会の会場行ってくる!近いし、準夜の頑張ってるとこ見たいし!]


嫌な予感がする、そう考えていた矢先に携帯の着信音が鳴る。



……

「もしもし」


「もしもし、準夜さんですか?」


「…誰ですか?」


「私、××病院の田中と申します。あさひさんのことなんdkm」




また嫌な予感がする。電話での医者の話はその時点で何を言っているのか聞き取れなかった、足を今までにないくらい動かしていた。

気がつくとあさひを見つけていた。病院のベッドで横になっているあさひを。

近くにいた医者が驚いた顔で自分を見つつ、自分に落ち着いた声で話す。




「あさひさんの状態ですが、もう長くないです。恐らくこれが最後の会話になるかと。」


「なんで…なんであさひはこんな事に…」


「…横断歩道を渡ろうとしたところ、信号無視したトラックに引かれたそうです。」


なんで、なんでこんな事になるのだろうか。大会に参加した俺のせいだ。自分を責めていると、


「じゅ…ん…や…、泣かないで……」


「あ…ああぁ…ああああああああぁぁぁ!あさひ俺のせいだ!俺が!ゲームなんてしてなかったら!」




「じゅんや……す……き…だよ」





………………


「もう言葉が出ません!この男は人間なのでしょうか!?今回のeスポーツ世界大会優勝者は…もう名前を言わなくても分かりますが、準夜選手です!!10連覇、10連覇という歴史的快挙を成し遂げました!!!」



「ヘイジュンヤ、もう俺驚かないよ!」


「センキューマーク、君がいないとこのゲーム楽しくないからね」


「ハハッ、顔が笑ってないぜーブラザー、……まあ色々災難だったな…」


「………」



日本に帰国し、気づけば彼女の目の前にいた。

彼女の周りを綺麗にし、線香を焚く。

もう、疲れた。生きるのには



「なんだこれ…」



先程焚いた線香の近くに黒い羽がある。カラスの羽だろうか、ふと手に取ってみると目の前には、黒い翼が生えた人間とは言い難い異形の生物が現れた。

その生物は歪な口を動かして話す。



「オマエがジュンヤ、だな?」


「…何が起こっているんだ…」


「まあ、気持ちは分かるが…、…そうだな俺のことは【悪魔】とでも呼べ。」



「悪魔」は、続けて話す



「いきなりだがオマエ、彼女に会いたいだろ?合わせてやるよ。方法は…そうだな…お前と彼女が出会う前の時間まで時間を戻してやるよ。」


「…条件は?」


「もちろん、タダでとは言わねェ。代償はお前の記憶とお前の[ゲームの才能]だ。記憶に関しては、今までのことは全部まっさらだ。もちろん才の___」


「頼む」



自分の早すぎる決断に驚いたのだろう、悪魔は面食らった顔をしている。…正直あさひに会えるのなら何もいらない。



「オイオイ、本当にいいのか?オマエが今までに得た富、名声、他の全てが消えてなくなるんだぞ?」


「それでいいから頼む」


「分かった…それじゃ、行くぞ…」





………


「君名前なんて言うの?…へー準夜って言うんだ。ねえ、ゲームって知ってる?よかったら一緒にやろ!」


「アハハハハ!君ゲーム下手だね!私が教えてあげるよ!」


「一緒にテレビでeスポーツ世界大会見ようよ!━━━━━━━━このマークって人強いね!え?準夜この人に勝てるの?無理無理(笑)準夜じゃ何年やっても勝てないよ(笑)」


「ん?私の名前?そーいえば教えてなかったね!私の名前は…」


記憶や持ってた物が無くなったとしても、決して2人が結ばれる運命は変わらないのだろう。

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