【17】クレオ対エリス②
開始と同時にエリスが飛び出す。
エリスの十八番。これは今まで何度も喰らっているので、今のクレオには容易いはずだった。
スピードが格段に上がっている。
しかも、間合いに入って剣を振り上げるのが好きな子なのに、今回は初手から突きで来た。
(はや、やば)
クレオは何とか剣で突きの軌道を変えて左に飛んで避けた。
「やるじゃない。」
「お前メチャクチャ速くなってないか?!」
「でしょー」
と言いながら突きを何度も繰り出す。
アルマンの攻撃に似ている。
クレオはそれを後退しながら何とかかわしていく。
何度か体をかすったが、入試と違い有効打でなければ勝敗は着かない。
「場外、待て。」
場外もまた仕切り直しになるだけ。
「今ので勝てると思ったんだけどな。なんだか悔しいな」
(場外は助かるなぁ)
エリスはそのスピードと手数で攻め倒すのが常套手段。一度止まった事で先手を取れれば彼女は防戦に不慣れなのでクレオにも勝機がある。
「では、はじめ!」
エリスが初手と同じ様に突く。
クレオがかわした後に次の手を用意しているのだが、クレオも相討ち覚悟で飛び出し突いて来た。
こうなるとリーチの長いクレオが有利。
エリスもそれは分かっているので、たまらず弾き上げる。
その時あいたエリスの脇を左手で押し退ける。
(チャンス!)
少しよろめいたエリスにすかさず剣を振る。
動作は小さく、且つ力強く。
正面から受け止めてしまうエリスは力負けしている。
「あんたさっき胸触ったでしょ!」
エリスが大声で言った。
「ちょっ何いってんだよ。触ってねぇよ!」
触れたのは脇のはず。
(柔らかかったけど)
「嘘つき!どさくさに紛れて触ったじゃない。 この変態!」
「(サイテー・・)」
周囲の女子の冷たい視線にクレオの手が止まる。
その隙を突いてエリスは脇腹を切る。
「それまで!」
「アタシの勝ちぃ」
エリスが下瞼を指で下げ、舌を出す。
「あ!てめぇ汚ねぇ。嘘付きやがったな!」
「試合中の心理戦は認められてるのよ?」
「だからってこれ以上オレの評判落とさないでくれよ」
「大丈夫よ。友達なら信じてくれるわよ。きっと。」
「それだと新しく友達出来ないじゃないか。どうすんだよ」
「んー、知らないっ」
エリスは肩をすかして、あざとく微笑む。
(くっそう)
クレオはそれが可愛く見えてしまった事が悔しくてしかたなかった。
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