【13】学院生活開始



「おはよう」


寮の食堂にエリスが現れる。


 髪はボサボサでいかにも寝起きだ。


「エリス、おはよう」


クレオとロエルの二人には見慣れた光景。


「同室の子は?」


「朝弱いから来ないって」


 朝食、夕食は利用時間が決まっているが、幅は広く、利用自体本人の自由なので一堂に会する事もない。


なので、食堂は生徒の人数に比べて席が少ない。


「おにぎり位持ってってあげようかな」


 テイクアウトの用意もある。


「それがいいね」


「いらないって言われたら後でオレが貰うよ」


「うん。宜しく」




 寮は学院の真向かいにあり、通学時間は学院内の移動で10分程。


 初日なので早く来ている者も居れば初日からギリギリの奴もいた。


 クレオとロエルはその中間位。



 授業開始のチャイムと同時に大人の女性が入ってくる。


「君達の担任を務めるテーツ・ホームルだ」


 彼女はとても教員らしからぬ格好をしている。


 教員の服装は自由で、彼女は見るからに武闘派な肉体が少ない布から見えている。


「(先生、凄い体だね)」


ロエルがあらわな腹筋、二の腕の筋肉を見て言った。


「(ああ。大きいな)」


「(身長?大きいね)」


 ロエルと見ている所が違うのは分かったが、話が噛み合っているのでクレオは訂正しなかった。




 午前中はオリエンテーションと学科。


 学科も技能もテーツが担当する。両方優れていないと教員には成れない。


「入試問題の解説をする。」


 全員に昨日と同じ問題用紙が配られた。


「各々学力に差があるので付いて来れる所まで付いて来なさい。 後は寝てても構わない。ただ、過度の私語には体罰を与えるからそのつもりで。」


 厳しい口調で言うものの、テーツの解説は初歩から丁寧だった。


 クレオ達は孤児院で勉強していたが、全ての生徒がそうであった訳ではない。


 生活する上で足し算引き算は出来るが、計算記号に馴染みがない。そんな者も少なくない。


「もう寝ちゃうの?」


「80問目位で起こして。」


 テーツの解説に付いていけなくなり離脱する者。クレオの様に初歩解説に飽きて寝る者と様々。


 ロエルは難問解説にたどり着くまでにもう一度全問解き直していた。




「クレオ起きて。お昼だよ」


 ロエルに揺さぶられてクレオは目を覚ます。


「・・ん?授業終わった?」


「うん。」


「80問目で起こしてって言ったのに。」


「起こしたのに起きなかったんだよ。」


「そっか。じゃぁいいや。」


「放課後教えようか?」


「ああ、うん。帰ったら部屋行くよ。」


「わかった。とりあえず食堂行こ。」


「ああ。昼飯か」


「うん。いこ」

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