第二十四話

 世の中わからないことばかり。

 だけど、百井の綺麗な顔を寝起きに見るのは良いことである。これは明白。

 とは言え、今後昼間のような珍事が起こり得るのだろうか、と頭の片隅で考えながら夕食を済ませた。

 そして別腹に物を言わせ、二日続けての過剰なカロリー摂取に着手。

 本日食すのは秋らしくモンブラン。

 どこにでもあるコンビニで気軽に買え、サイズの割には値段が張るものの、中々のクオリティの代物。今はこれで十分。

 この小さな山は少しずつ切り崩してちびちび味わうのがベターである。

 正直な話、このサイズだと一口で食べられる。たまにやる。一口で頬張った時に口の中で繰り広げられる贅沢なお祭り騒ぎと言ったら甘露の極み。もちろん他人に見せられないお上品さの欠片もない食べ方である。このモンブランは二つ買ってきたので一つは一気に食べようと思う。

 私はケーキなどの甘味を楽しむ際にはコーヒーが欠かせない。

 そのために用いるのがこの全自動のコーヒーメーカー。コンビニのカウンターに設置してあるエスプレッソマシンを小型化したようなデザイン。各所のパーツは分解が簡単で洗いやすく、ユーザーフレンドリーな企業努力が感じられる。

 これが家に来た時は持て余すだろうと思っていたけど、良いものではあるから値段に見合った美味しいコーヒーが出来上がる。今となっては私を含めた家族の生活には必要不可欠な存在。

 いつもならこのコーヒーメーカーでコーヒーを淹れる。

 けれども今日ミルクティーな気分。近頃の息抜きはコーヒーとミルクティーを半々の比率で楽しんでいる。

 元よりミルクティーは好きな飲み物の部類に入る。

 しかし、今の髪色にしてからと言うもの、何だか共食いならぬ、共飲みをしている気分になってしまい、意図して飲むことを避けていた。

 そんな気分は百井がミルクティーを美味しそうに飲む姿を頻繁に見ることで薄れてきた……いや、時が経ったことで私がミルクティーを飲むことに前向きになっただけではないか。そこまで他人に影響される私ではない。

 大体の問題は時間が解決する、と思いながら食器棚の引き出しから頂き物の高そうな茶葉を引っ張り出した。

 濃い目のロイヤルなミルクティーが飲みたい気分なので、ティーポットに茶葉を少し多めの量を入れ、コーヒーメーカーを給湯モードにしてお湯を注いだ。これでは面目丸つぶれのただの電気ポット。

 茶葉を蒸らしている間に牛乳を温める。

 美味しいミルクティーを作るのは簡単ではない。

 主に牛乳の温度が重要で、温めすぎると臭みが出てしまい、自分が思い描いた味のミルクティーにならない。市販の方が断然美味しかったりする。洗い物も多く、コーヒーを淹れたほうが手間は少ない。ボタン一つで出来る。

 それでも甘さに溺れるためには必要な過程と思えば楽しいのである。

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