第65話 窮地

 広い高原の中心には巨大な白銀鱗の大蛇竜ハクジュオス

 そのすぐ目の前で今にも殺られそうなジュエル。

 他の騎士は皆、白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスに無惨にも殺されたか地面で気絶していた。

 離れた所に一人、レイナが弓を構えていた。


「お願い、逃げて―――‼」


 ――ビュ――――――――ン


 矢を飛ばし、ジュエルを助けようと試みるが……。

 口内以外の箇所にヒットしても、かすり傷程度。

 傷口はすぐに治癒能力で回復され塞がっていく。


 そして、白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスは目の前のジュエルに止めを刺そうと大きな牙を剥いた。


 もうダメ……。

 この状況を助けられる人は誰もいない……。

 私の弓だけじゃ……ジュエルも助けられない……。 


 お願い……。

 エン……。

 どこにいるの……。

 お願い……。

 助けて……。


 地面から立ち上がったジュエル。

 最後の足掻きと、迫り来る白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスの方を向く。

「レイナだけでも……安全な所に早く逃げて……」

 ジュエルは大きく手を広げ、自ら命を投げ出そうとしていた。 


「さぁー、来るなら来い――――‼」

 声を上げ、威嚇する。

 白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスは大きな口を開き、ジュエルへと襲い掛かっていく。



「い、いや……。ダメ……ジュエル――――――――――――――――――‼」 



「ニャ――⁉」

 ニャーが何か異変に気付いた。


「あれは……⁉」

 森の茂みから勢いよく何かが飛び出して来たのであった。

 それは一匹のガモリであった。

 そして白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスに向かって、一直線に突進する。


「っ――――――――⁉」

 ここまでか……。

 ジュエルの目の前には大きな牙が迫っていた。

 そして、大きな口に飲み込まれようとした時だった。



 ――バ――――――――――――――――――ン



 目の前で急に大きな衝撃音と共に爆風が巻き起こった。


 ――オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ 

 そして、白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスの大きな悲鳴。

 白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスはそのままその場に平伏した。


「一体……なにが……⁉」

 爆風は辺り一面の視界を曇らし、一体何が起こったのか状況の掴めないままのジュエル。


「こ、これは………炎……⁉」

 目の前に舞振ってきた白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスの黒焦げた鱗を手にした。

 鱗には僅かに炎が燃えて、やがて消えた。

 でも、どこから……?


「乗って――‼」

 その声と同時に何かが体に巻き付くと、ジュエルは宙に浮いた。


「えっ、わぁ―――⁉」

 そして、そのまま晴れた視界の先に現れたガモリの上へと乗っかった。


「大丈夫だった?」


「あなたたちは……。一体……⁉」


「私たち……? そうね、強いて言えば、レイナの友達だよ!」


「友達……⁉」

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