第39話 港街 リューコ

 俺たちは船を降りると、早速、街の中へと向かった。


「すごーい! 綺麗な街だね! それに緑の孤島グリュースよりもたくさん人がいるね!」

 赤を基調としたこの街は、あらゆる所に赤い提灯がたくさん飾られており、まるで東アジアの国のような所だ。


「そりゃ、ここは地の大陸アースランドの最も東にある港街リューコだからな! 多くの人が行き交う訳さ!」

「へぇ、リューコね!」

「この地域では、大昔から猫と蛇を神様として祀られているんだよ!」

「だから、さっきから、至る所に竜と虎みたいな絵がいっぱいあるのか!」

「……リュウ? ……トラ? なんだそれ?」

「おい、冗談だろ……?」

 竜と虎は通じないのに蛇と猫は通じるのか……。

 本当に、不思議な世界だ……。

 待てよ、竜と虎でリューコ……。

 そんなまさかな……。


「ところで、俺たちは食料を買い終えたら、この街から出発するが、お前たちはどうするつもりなんだ?」

「そうね。今日はこの街に泊まって、大地なる世界樹アースユグドラシルへの行き方を調べてみるよ!」

「それだったら、行く前にガモリを探すといいぞ!」

「……ガモリ?」

「どんな段差だって跳び超えてくれる生き物さ! 俺も登ったことがないが、大地なる世界樹アースユグドラシルまでの道のりは段差が激しいって聞くからな! だから、他の生き物よりは断然、早く辿り着くらしいぞ!」

「分かった、そのガモリって生き物を探してみるね! ありがとう!」

「いいってことよ!」



 それから、俺たちは港近くの市場へとやってきた。

 大きな港だけあって市場もすごく大きい。


「そこの、兄ちゃん、一匹どうだい? 旨いよ?」

「今朝、採れたて、ピチピチ新鮮だよ! ほら、どうだ?」

 威勢のいい声が飛び交う市場には、色んなお店にたくさんの魚が並んでいた。

「すごいね! どれも見たことない魚ばっかりね!」

「おっ、すげー‼ なんだ、あの巨大なイカは!」

「イカ? あれは、クラーゲだ! 最近、この辺りによく出るらしいな! 船を襲う危険なモンスターだけど、食うと旨いんだよ!」

「クラーゲ? 確かに頭はクラゲぽいけど、胴体はイカにしか見えないな。足も十本だし!」

「エン、カイさん、見て見て! あっちにも大きな魚がいるよ!」

「レイナ、あんまり一人で先行くなよ!」

「ほら、二人とも早く早く!」

「にゃ―――――――――――――――――‼」

 ニャーも猫だからだろうか、目の前に並ぶたくさんの魚に目がない様だ。



「ごちそうさまでした―――!」

 カイの買い物を終えると、市場近くの酒場で俺たちはご飯を食べた。

「本当に二人ともここまで付き合ってくれてありがとうな!」

「いえいえ、こちらこそ、カイさんに出会わなかったら、ここまでこんなに早く来れなかったよ!」

「途中の宝島では死にかけたけどな……!」

「でも、楽しかったじゃん! 大きな海賊船にも乗れたし!」

「そうだけどさ……! 宝物は結局……」

「いつまで根に持ってんだよエンは! ここのお金は俺が払ってやるし、いくらか金もやるよ! お前ら二人でこれから旅をするにも金は要るだろ?」

「本当に? ありがとう、カイさん!」

「そうだったら、もっと料理を頼むべきだったな……」

「おいおい、俺だってそんなに金は無いんだから、勘弁してくれよ!」

「冗談だよ、ありがとうな、カイ!」

「おう!」

「カイさんはこの後はどこへ向かうの?」

「そうだな、キャプテンとも話したんだが、南の方へ行こうと思っている」

「南の方? そこには何があるの?」

「もちろん、宝物に決まっているだろ? 今回は船とかではなく、正真正銘の金銀財宝さ!」

「金銀財宝⁉ 私も行きたい!」

大地なる世界樹アースユグドラシルへ行くのはどうするんだよ?」

「少しぐらい寄り道したっていいじゃん、エン?」

「それはいいけどさ……」

「おっ、二人とも着いて来てくれるか? 別にいいが、次の目的地は暖かい南の島なんかじゃなくて寒い氷の海だぞ?」

「えー、氷の海なんだ……。寒いのはちょっと嫌だな……」

「は、は、は……。レイナちゃんは本当に正直だな。悪いことは言わない、二人はこのまま大地なる世界樹アースユグドラシルを目指した方が良い! 本当に二人が異世界から来たと言うなら、この先、どこまで旅が続くか分からねーからな! 少しでも早く、元の世界に帰れる方法を探せ!」

「カイさんの言う通りね」

「そうと決まれば、俺たちはそろそろ出発するぜ!」

「本当にここまでありがとうな、カイ!」

「いいってことよ!」


     * * *


 再び港まで戻り、カイたちを見送った。

「また会えるか分からないが、俺の方でもお前たちの元居た世界について集められる情報は集めてみるぜ!」

「ありがとう、カイ!」

「ありがとう、カイさん!」

「いいってことよ! 兄妹! 元気でな!」

「じゃあね〜!」

「ニャ〜〜!」

「ウェン〜!」

 大きく手を振りながら、海賊船の出港を俺たちは見送った。

「さらば!」

 豪快に船舵を取るカイと、見張り台から手を振るウェンギン。

 あっという間に、船は遠くへ行き、見えなくなってしまった。


「さてと、俺たちは今日の宿を探そうか!」

「そうね! 行きましょう!」

「ニャー‼」

「ねぇ、エン、宿を決めた後に、また、この街を散策してもいい?」

「もちろん、いいけど!」

「さっき聞いた話、街の反対側に大きな屋台街があるんだって!」

「いいね! じゃあ、今日の夕飯はそこで食べよう!」

「ニャー⁉」

「じゃあ、さっさと宿を決めないとね! 行くよ、エン?」

「おう、レイナ!」

 俺たちは宿を見つけた後、夜はこの街の随一の屋台街へと行き、この街を満喫したのであった。

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