第38話 地の大陸

 宝島を出発して、数日後。


「ウェン〜!」

 高い見張り台の上に乗ったウェンギンが望遠鏡を片手に何かを見つけたようだ。

「どうした? キャプテン?」

「ウェン! ウェン!」

「本当か? お前ら、こっちにに来てくれ!」

「どうしたんだよ、カイ?」

「カイさん、何か珍しいモンスターでもいた?」

「お前ら、見ろ! あれが地の大陸アースランドだ!」

 目の前にぼんやりと大きな大陸が見えて来た。

 遠くからでも分かるぐらい緑豊かな森林とその奥に高く聳える広大な山脈。


「でっかい、山だな!」

「はぁー? 何言ってんだよ、エン。あれは山じゃない、あれは全部、木だ!」

「木……⁉ はぁー? あんな大きな木がある訳ないだろ……?」

「はぁ……。お前、地の大陸アースランドに行きたがっていた割には、何も知らねーんだな!」

「カイさん、あれが木ってどういうことなの?」

「レイナちゃんもか……。いいか、あれが大地なる世界樹(アースユグドラシル)だ!」

「あれ全部が大地なる世界樹アースユグドラシルなの⁉ すごい、こんなに大きいのね!」

「そうだ、この世界に三つある世界樹ユグドラシルの中で一番の大きさを誇るんだ!」

「そう言えば、世界樹(ユグドラシル)はこの世界に三つあるっていうのは聞いたけど、残り二つは何なんだ?」

「はぁ……。そんなことも知らないって、今まで何も勉強して来なかったのか……? いいか、あとはの二つは、砂の大陸ドライランドにある天空なる世界樹スカイユグドラシル水の大陸ウォーターランドにある大海なる世界樹マリンユグドラシルだ!」

「その三つでこの世界の魔力マナを生成してるんだよね?」

「そうだ! エンが炎を出せるのも、レイナちゃんが風を吹かせられるのも全部、魔力マナを生成してくれている世界樹ユグドラシルのおかげってことよ!」

「すごい!」

「そう言えば、お前たちはずっとあの島にいたのか? 出身はどこなんだ?」

「俺たちは……その……」

 俺はレイナはお互いに顔を見合わせた。

「どうする……? 本当の事を話すか……?」

 そう小声で話すと

「そうね……」

 レイナは小さく頷き、話し始めた。

「私たちはね、少し伝えづらいんだけど、この世界の人じゃないの……。その、異世界からやって来たの……」

「異世界って……伝説の勇者のおとぎ話じゃないんだからさ!」

「その話、私、知ってる! お婆さんから聞いた!」

「俺もテツさんから聞いた!」

「いやいや、本当にお前たちは異世界から来たのか……⁉」

「はい!」

「おう!」

「まじか……勇者の話はおとぎ話だと思っていたからな……。こうやって、異世界からやって来たとか言われてもな……どう信じればいいか……」

「私たちもびっくりさせると思って今まで黙っていたの……ごめんなさい……」

「まぁ、お前たちがどこから来た人間だろうと別に気にしないさ! 一緒にこの船を見つけてくれた仲間だからな!」

「ありがとう!」

「でも、地の大陸アースランドに行ってどうするんだ?」

「それが……。とりあえず大地なる世界樹アースユグドラシルにまで行ってみれば何か元の世界に帰れる手がかりが見つかるんじゃないかって……」

「そんな漠然とした理由で……。とにかく、何か手がかりがあるといいな!」

「サンキュー、カイ!」

「ウェン~、ウェン~、ウェン~!」

 見張り台にいるウェンギンが大声を上げる。

「あ、そろそろ、港に到着だ! お前たちも上陸の準備を手伝ってくれ!」

「おう!」


 そして、船は地の大陸アースランドの活気ある港街に着船した。

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