第40話 ガモリ
次の日、俺たちは昨日とは別の街外れの市場へと向かっていた。
「確か、この辺りに宿の亭主さんが教えてくれたガモリが売っているお店があるらしいけど……」
「ガモリってそもそも、一体どんな生き物なんだろうな……」
「カイさんの話なら、人を乗せて運ぶ生き物だから、きっと馬か、もしかしたらラクダだったりするんじゃない? 私、ラクダに一回乗ってみたかったんだー!」
「そうだど、いいな!」
俺たちはそんな正体不明の生き物を求め、市場に入った。
この街は本当に広い。
昨日よりも大きな市場には、見たことの食べ物に素材が店頭に沢山並ぶ。
それに、モンスターも全て見たことない物ばかり。
空飛ぶ兎や沢山の荷物を運ぶ巨大な亀。
食用なのかペットなのか、丸々と太った豚の様なピンクのネズミ。
目に入る全てが新鮮でワクワクが止まらない。
「……ねぇ、エン?」
「どうした、レイナ?」
「あれだろう……?」
レイナは市場の外れにある大きな広場を指差した。
そこは全面、柵に囲まれており中には見たことの無いモンスターが人を乗せて走っていた。
それは、まるでカエルの様な緑色をしているが、トカゲの様な細長い手足。
驚くべきはその大きさだ。
人を三、四人は乗せられる程、大きなサイズだ。
カエルっぽいトカゲ、いやヤモリだから……。
もしかして、これがガモリ……?
店の前へと向った。
「はい、いらっしゃい!
悪い予感が当たってしまった。
「どうやらあれがガモリの様だけど……レイナ?」
「…………え~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
一瞬にして表情が変わるレイナ。
「どうしたの?」
「無理無理無理無理……。私、カエル、大嫌いなの……!」
「そうだったんだ……でも……」
「そこのお兄ちゃんたち? お兄ちゃんたちも、これから
威勢のいい店主のおじさんは話しかけてきた。
「そのつもりですけど……」
「なら、うちの店のガモリが一番だ!」
「あの……、つかぬことをお尋ねしますが……
「それはだな、
「なるほど……カイの言った通りだ!」
とレイナの顔を見ても、あまり乗り気ではない表情。
「レイナ、やっぱり、
「無理無理……。カエルだけは無理だって……!」
「カエルじゃなくてガモリだけど」
「どっちだって無理! あのくりっとした目にあのツルツルした肌。カエルもガモリも変わらないよ~!」
「そう、案外、顔はトカゲぽくて可愛いけどな」
俺は近くのガモリの元へ行き、頭を撫でる。
「……え……? 一体、どこが……?」
とレイナの周りを一匹の虫が飛び回る。
――ペロッ!
ガモリは虫を捕食するために大きな舌を伸ばすと、それがレイナの頬を軽く触れた。
「イヤッ――――――――――――――――――――‼」
レイナは大慌てで、俺の腕に抱きついた。
「ちょっと、レイナ……⁉」
「エン、ガモリ、嫌だ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
「お嬢ちゃん、そんなに驚いて、大丈夫、人は食ったりしないよ!」
「そうだよ、レイナ、大丈夫だって!」
「いや、いや、何が何でも無理な物は無理だから……!」
涙目で怯えながら、俺の腕を掴んだまま離さないレイナ。
色々とレイナの柔らかいものが……。
いやいや、今はそんな場合じゃない……。
「ちなみに、このガモリいくらですか?」
「四人がゆったり乗れる大きいサイズは金貨二十枚。三人が限界のサイズは十五枚ってところだ!」
「レイナ、どう……?」
「お金は足りるけど……」
「お兄ちゃんたち、ガモリは初めてかい?」
「はい!」
「ガモリはよく上下に跳ねるから扱いは難しいよ。慣れてないと、なかなか進まないかもな!」
「そうなんですか……」
「なんなら、試しに乗ってみるか?」
「いいんです?」
「いいとも、いいとも、じゃあ、柵の中に入って!」
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