交戦編ー2
二
―ドアが開いた瞬間、心臓が跳ね上がりそうになった。けれどその心配はなかった。ソフトボール部じゃなくてよかった...―
桃倉はほっと胸をなで下ろした。
「驚かせないでよ!」
大きな声で言う岡谷に対して、テニス部員の女子が冷たく返す。
「ドアを開けただけでそんな反応をされるのは心外。それどころじゃないの。ほら早く運んで!」
テニス部員たちに運ばれる鈴木の姿を見て、桃倉が
「え!どうしたの鈴木君!もしかしてさっきの爆発で?」すると鈴木の傷を詳しく見始め、「これは...火傷をしている部分が少しあるね。でも軽傷ってところかなあ...いや、この範囲の火傷の他に、打撲してる部分もある。じゃあ重傷ってところかなあ...ああでも、意識があることからして軽傷?」
「うるせえ」
変なこだわりを持つ桃倉に対して、鈴木が目を閉じながら絞り出すような声で言った。
「まず、そのベットに寝かせてあげてよ。」
テニス部男子は鈴木を運び、ベットに乗せる。
「せーの...よいしょ。」
「いたっ。」
「あ、そうだ、背中も怪我してたんだっけ?」
それを見かねて、
「私のお父さんさ、救急救命士やってるの。だから、少しは怪我の処置とかできるよ。任せて!」
「え!マジで!桃倉が?見た目によらないね人って。」
テニス部男子が大げさに驚く。
「それってどういうこと?」
「いやいやなんでもない。」
「だって桃倉天然じゃん」
岡谷が平然な顔をしてテニス部男子の代弁をした。桃倉はかまわず鈴木の手当てをし始めた。
「あーこれは結構痛いね。誰かガーゼと消毒液持ってきてくれない?」
ガーゼと消毒液を受け取り、話をしながら傷の手当てを始めた。
「こんなに砂だらけじゃ、相当近くで爆発したんじゃない?あーここも怪我してる。これじゃあ重傷かな。でも、これって軽傷なのかな?あ、絆創膏ある?」
「もうさ、軽傷重傷ってしつこいよ。何そのこだわり。もう中傷でいいじゃん。」
岡谷から絆創膏を受け取り、話を続ける。
「あー聞いたことないけどそれもありだね。じゃあ鈴木君は中傷!あ、こっちもじゃん。結構処置に時間かかるかもしれない。救急車は呼んだの?...ああ、そうか、外部に連絡出来ないのか。」
「さっき警察来てたよね。もうじき助けてくれるんじゃない?」
テニス部男子が気づいた。しかし、
「だから、助けを求めようとして、爆発が起きたんでしょ?これじゃあ警察が助けに来るのも時間がかかるよ。」
テニス部女子がすぐに返答した。
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