5月15日(徳嶺→鶴舞)

 鶴舞さん


 ようやく訪れた休日、私は二十時間睡眠を貪るでも溜まったドラマの一気観をするでもなく、この交換日記を開いて目を通し、こうして続きを綴っています。


 それだけ私はこの時間を待ち望んでいたということです。想像していたよりもずっと、交換日記は楽しいですね。それとも鶴舞さんという人間性の素晴らしさが私の想像を超えていたのかしら。


 そんな鶴舞さんの素敵な人間性は、どうやらタウリン5兆億千万配合という法外な主成分で成り立っているようですね。


 こんな話があります。


 年末年始の我が職場、アルバイトは軒並み休み、少ない正社員だけが必死になって現場を回すも忙しすぎて自ら吐いた泡であっぷあっぷしている折、アルコールで顔を赤らめた経営陣がふら~っと訪れ、ニコニコしながら安い栄養ドリンクを手渡して帰っていきました。


 ようやく客の流れが止まり、(現支配人とは違って)働き者だった前支配人はドリンクの瓶を三本空にした後言いました。

『徳嶺君、こんな職場に長くいてはいかんよ。栄養ドリンクは体力を回復させるわけでない。未来の体力を現代医学を用いて強制的に今使わせる、つまり元気の前借りをさせる、げに恐るべき悪魔の飲み物、否、悪魔の飲ませ物だ。我々人間は悪魔の下で働いてはいかんのだよ』

 翌年、三十代後半で髪を真っ白にした前支配人は転職をしてしまいましたが……それはまた別の話。


 今話題にしたいのは前借りという部分です。


 5兆億千万も前借りしてしまったら、これからの人生、私は鶴舞さんへの返済で終わってしまいそうです。元気をお返しすることはできませんが、鶴舞さんは私から何を取り立てたいとお思いですか?

(あなたの心です。という台詞は既に銭形警部が世界一格好良く決めているので無効です)


 ああそれと、昨日は美味しいラーメン屋さんを教えてくれてありがとう。

『疲れ果てた体に特濃スープが染み込みますよ!』と言われて意気揚々と馳せ参じたは良いものの、常連と思しき方々が生み出す特有の熱気と凄味に負けてUターンをしてしまいました。

 帰りにコンビニで同じ名前を冠するカップラーメンを買ってみましたが、イマイチ魅力が伝わりませんでした。今度はありったけの勇気を持って入店を試みたいと思います。


 末筆になりますが私の体の心配をしてくれてどうもありがとう。でもどうか心配しないでください。この戦場には長らく身を置いているので、労働量が致死か瀕死か見極めは付いています。小娘とは年季が違うのよ年季が。


 ゴールデンウィークが終わってから少しの間は暇が増えますので、シフトが重なっている日は是非ともラーメン談義に花を咲かせましょう。(もう少し初見でも入りやすいお店を教えてください。)それでは。


 歴戦の大娘、徳嶺 千束より


 ラーメン博士、鶴舞 虹子様へ

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