第5話 「最上位魔法」
「もちろん君も選挙に参加してもらうよ、マーズ君。とは言ってもエルンの活動の手伝いだけどね」
「ええ!?私もいいんですか?カイラさん」
「もちろん。もしエルンが魔王になったら、エルン次第では君も役職を持つことになるしね。
……とりあえず、もう遅い時間だし一旦解散ってことで。」
…………
〜魔界・城下町〜
「今日はいろいろあったね〜」
「そうね。」
「そういえば、何でカイラさんは私たちのこと知ってたんだろう?」
「……分からない」
受付が終わり、帰路に着く2人。城下町では早くも立候補者の演説会が開かれていた。
「このエリオット・バーンデッドに清き一票を!」
「きゃあああああ!」「エリオット様あああ!」「こっち見てえぇぇ!」
エリオット・バーンデッド
その魔界トップクラスのイケメンで頭脳明晰、名家バーンデッド家の御曹司であり、エルン程ではないが魔術にも長けている。今回の選挙の1番人気と言ったところだ。ちなみに、エルンとマーズの同級生だ。
「げっ、エリオットじゃん。気づかれないように先に行こ!」
「むむっ!君たちはもしかして、マーズ君と……エルン・ノワール!?貴様なぜここに!?もしかして僕の演説を聞きに来たのかい?仕方ない、同級生のよしみだ。君たちにも聞かせてあげ…」
「いや、私たちも出るの。選挙に」
「え?」
エリオットの言葉を遮るエルン。
だがその突拍子のない発言にエリオットは理解出来ずにいた。
「選挙に?君がかい?」
「ええ。」
「はーはっはっはっはっ!ずいぶんと面白い冗談を言ってくれるね!君は僕に勝つというのかい?」
「もちろんよ。まあ、私に魔界魔法コンテストでほとんどの属性で負けてるあなたは勝てないでしょうね、エリオット。」
その言葉は魔界でもトップクラスの魔力と頭脳と容姿、さらに高すぎるプライドを持つエリオットには深く刺さった。
「言ってくれるねえ、エルン・ノワール。今回は威勢がいいようだね!君のその0に等しい胸と違ってね!」
その言葉は、魔界でもトップクラスの魔力とそこそこの頭脳と美麗な容姿、さらに無さすぎる胸を持つ(?)エルンには深く刺さった。
「アンタだけは殺すわ。エリオット」
「君だけは潰してあげるよ。エルン・ノワール!
そうだ!魔力勝負<マジックバトル>をやろう!僕のファンの前で君の負ける姿を見せてあげよう!」
「ええ!エルン!?今マジックバトルやるの!?
さっきやったばっかじゃん!」
「ええ、マーズ。そうだ。あなた審判(ジャッジ)やってくれない?」
「……しょうがないなあ。」
マーズは指をパチン、と鳴らす。
審判(ジャッジ)とは魔力勝負において仮想空間の構築やその名の通り2人の決着を判断する、第三者の役割のことだ。
空間が構築される。今回は無人の平原のようだ。
「さあ、始めようか!<マジックバトル>を!」
「…………」
「まずは僕から行こうか!【ヘルファイアストーム】!」
「……ヘルファイア」
上位術のヘルファイアストームに対してエルンは、中級術の【ヘルファイア】を放つ。本来なら威力の差は歴然、だが2人の火球の威力は拮抗していた。
「エルン・ノワール!僕をあまり舐めないで欲しいな!確かに、魔界魔法コンテストでは何度も君に負けた!だが!今回の僕は違う、修行に修行を重ね遂に!あの【究極の術】を完成させた!」
「究極って………まさか!?」
「そう!見せてあげよう!【最上位火属性魔法グランドファイア】を!」
エリオットの頭上の空からは烈火のごとく燃え盛る流星群がエルンを襲う。
「最上位魔法」とは、その大きすぎる威力のため、マジックバトル以外での使用を禁じられている、政府から許可された者以外は使えない。いわば「禁術」だ。
「さあ!どうする、エルン・ノワール!」
「ヘルファイア」
「!?【ヘルファイア】だと!その魔法ではグランドファイアどころか、僕のヘルファイアストームを受けきるのがやっとだった技だぞ!?」
「へえ……あなたには【受けきるのがやっと】に見えたのね。」
「何!?僕の【グランドファイア】が押されている!ま、まさかさっきまで威力を抑えていた、とでも言うのか!?」
「じゃあね、エリオット・バーンデッド」
「くそぉぉおおおおおお!!!!!」
…………
「僕の………負けだ。流石だよエルン・ノワール。」
「……まさかあなたが【最上位魔法】を習得していたなんてね」
「それを持ってしても君には負けたけどな……」
「楽しかった。またやろ魔力勝負<マジックバトル>」
「……も、もちろんだ!今度こそ君を潰してあげるよ!」
「ええ。待ってる、エリオット・バーンデッド」
魔力勝負を経て、2人の謎の友情(?)が深まったのであった。
翌日……
「ねえねえ!見て見て!エルン!エルンが今回の選挙1番人気になってるよ!」
「は?」
エルンの物語は続く!
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