第2話 魔界総選挙

「だから貴方には、魔王になるために[魔界総選挙]に出てもらうわ。」


「魔界総選挙って、あの!?」







謎の女性の発言に驚くマーズ、驚くのは仕方ないだろう。魔界の中でも限られた者しか出ることが出来ない、魔界の王【魔王】を決める選挙だ。

もちろん一般の魔界人は参加することは出来ない、魔界屈指の魔法使いや貴族が参加するものとしては多数だ。








「エルン・ノワール、君には王になる資格がある。その年齢でその魔力と行動力、素質は魔界の中でもトップクラスだ。」


「……」



正直、魔王にはなりたい。だがなれるか分からない、なったとして何が変わるのか分からない。

そう躊躇しているエルンの背中を押すように謎の女性は言葉を続ける。








「エルン、君はお父さんを勇者に殺されているね?」


「…!」


「そうだね…魔王になることが出来たら今より簡単に[勇者]に復讐できるよ。王国なんてすぐに消せる、そして君には魔界の王…いや世界を統べる王になって欲しい。」





「……それほんと?」


「ああ、ホントさ。さっきも言ったじゃないか、君には素質があるって」



その言葉は父を勇者に殺されたエルンの心に響いた。かつて父を勇者に殺されたエルンとしてはこれほど簡単な手段はない。揺れていたエルンの心はすぐに傾いた。









「私…なる。魔王になる!」


「…ようやく言ってくれたね。よろしくエルン、そういえば自己紹介が遅れたね。私はカイラ・クリフ、魔界兵団団長でエルン・ノワール、君の魔王推薦者だ。」






「え〜!?カイラさん魔界兵団の団長なの!?」


「あはは〜勇者退治しようと思ったら君たちに先越されちゃったぁ〜。そういう君はマーズ…だっけ?話は聞いてるよ。魔界火属性魔法コンテスト2位だったっけ?」




「私の事ご存知なんですね!まあ〜1位はエルンに取られちゃったんですけどね(笑)」


「まあ、マーズ君は負けたとしても胸ではエルンに圧勝してるから大丈夫だよ」






「…カイラ、勇者の前にあなたを殺す。」


「あはは〜冗談だって〜」


などと他愛もない会話をしていると、カイラが足を止める。








「着いたよ。ここが【魔界議事堂】、ここでは重要な会議や投票が行われる場所だ。

いわば【魔界政治の核】だね。ここでまず、君が選挙に出る申し込みをするんだ。もう一度聞くけど魔王になる覚悟はあるかい?」


「もちろん、ある」


「じゃあ、行こうか。」

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