第32話 ちょーだいのポーズ
楽しそうに苗木を植えているフレアから離れて奥の方の整地をする。
淡々と順調に進めているように見えるけど、これがまたかなりキツい。
ドラゴンの姿で歩いたフレアの足跡は浅いからいいものの、なぎ倒した木を引っこ抜いた穴が割と深く、1つ埋めるのにも結構体力を使う。こりゃあ、明日は筋肉痛で動けないかもしれない。
ちょいちょい休憩したりして次々と穴を埋めていき、最後の穴を埋め終わる。
「やっと終わった〜。はぁ……次は苗木植えか。フレアはどこまで植えたかなー……」
フレアのいた所にフラフラと戻って行くとそこにはフレアがいなかった。
「あれ? どこ行ったんだ? まさか、またドラゴンの姿になるとかないだろうな」
神社の敷地内は何かしらの力が満ちているらしいから、そこでフレアが姿を消すとドラゴンの姿になっているのではないかと心配になる。
「ガウガウ! ガウガウ!」
「あっ!」
リズミカルなフレアの声が聞こえ、そちらに目を向けるとロープで囲われたキツネさんの別荘建設予定地にいっぱい苗木を楽しそうに植えるフレアの姿があった。
「フレア、ストップ、ストップ!」
「ガウ?」
「ここは植えちゃダメってキツネさんに言われただろ?」
「ガウ?」
注意をしたら手を止めてくれたものの、フレアは全く分かっていない様子。
「あーあ。これ全部植え直さなきゃ……」
苗木を掘り返す為にしゃがむとフレアが額をくっ付けてきた。
『アキトも一緒にやろ? 楽しいよ』
確かにリズミカルにガウガウ言ってたりしたから楽しそうだとは思っていたけど、植える場所が違う。幾ら楽しいからってこれではキツネさんに怒られてしまう。
「フレア。このロープの中はダメなんだ。折角、植えてくれたのに悪いけど別の場所に植え直そう」
「ガウゥ……」
明らかにフレアのテンションが下がる。何とかやる気を出して貰わないとなぁ。
「そうだ! 植え直したらキツネさんに実が生ったら分けて貰えるように頼んであげるよ」
「ガウ!」
食べ物が貰えると聞いたフレアはテンションがうなぎ登り。せっせと植えた苗木を掘り返し始めた。
これはまた確実に貰えると思っているな……どうしよ……。
苗木を植え直して残りも指定の場所へ植え終わった頃に丁度キツネさんがやってきた。
「どうじゃ? 順調に進んでおるか?」
「今、終わったとこですよ」
「おおー! 割と早かったのぅ。それではウチで菓子でも食おうか……む? 何じゃ小娘。手なんか出しおって」
神社に着いた時同様、フレアはキツネさんに両手を差し出してちょーだいのポーズを取っていた。
恐らく実をくれと言っているのだろう。
「ガウガウ!」
「さっきフレアのテンションが下がったので、つい実が生ったら貰えるように頼んであげると言っちゃいまして……それで多分、フレアはもう貰えると思っているみたいで……」
「小僧、お主なぁ……」
「ホントにすんません!」
「まぁ良い。小娘。すぐにはやれんから、とりあえず今日はウチで菓子を食って我慢しろ」
「ガウ」
菓子と聞いてフレアはぴょんぴょん跳ねて喜んでいる。何とかキツネさんに怒られないで済んで俺はホッとした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます