第31話 リズミカルにガウガウ
裏山に着くとフレアがなぎ倒した木は丸太にされて綺麗に隅の方へ積み上げられていた。
「木は片付けてあるんですね」
「さすがにお主らでは無理だと思ってな。ワシが平日にやっておいた」
「キツネさんがやったんですか!?」
「うむ。そうじゃが、何かおかしかったか?」
「い、いえ……」
さすがは神様。重機だ何だと必要とする作業を1人でこなすとは……。
「苗木と道具はそこに置いてあるから印の杭が打ってある所に植えてくれ」
「はい。あのロープで囲ってある所は?」
1番広いスペースに4つの杭が打ってあってそれをロープで繋いで囲っている場所があった。目測にして10メートル四方くらいだろうか。
「そこは丸太でワシの別荘を作る予定地じゃから、そのロープの中は何もしなくて良い」
「別荘ですか……」
別荘とはこれまた豪勢な響き。キツネさんは意外とお金持ち思考なのかもしれない。後で神社でのバイトをさせて貰えないか聞いてみよう。
「では、頼んだぞ」
去って行くキツネさんを見送って作業に取り掛かる。
整地に関してはキツネさんが植林の印を付ける時にある程度直したのか、割とやる所が少なかった。
その代わり植林はちょっと面倒。植える苗木はどれも果物が生る物ばかりで植える場所と数も決められている。
フレアが広範囲で荒したせいもあってかなり時間がかかりそうだ。
ここは早く終わらせる為に作業を分担しよう。
「フレア。これからこの苗木を杭がある所に植えていくんだけど分かるか?」
「ガウ?」
苗木を手に持って杭を指さして聞いてみたがフレアは首を傾げている。
この感じだと、そもそも何をするのかすら分かっていなさそうだ。
フレアにも分かるようにちゃんと教えて俺は整地をしよう。
「この苗木のケースに種類が書いてあるだろ? これと同じ種類の名前が書いてある杭の所にスコップで穴を掘って、掘った穴に苗木を入れる」
言葉だけでは不安だったから1つ取って実演。園芸に興味が湧いたのかフレアは大人しくジッと見ていた。
「苗木を入れたら少し土を被せて完成。分かったか?」
「ガウ!」
とても良い返事。こういう時はホントに分かってるのか不安になるんだよなぁ。
ただ、不安だからといって2人で1つずつやっていたのでは終わりが見えない。
「じゃ、俺は整地をするからフレアは苗木を植えていってくれ。整地が終わったら俺も苗木を植えるから」
「ガウ。ガウガウ」
任せてと言わんばかりの自信に満ちた顔をするフレア。俺は不安を胸に抱きつつ整地に取り掛かった。
まずはフレアの様子を見る為に近くの整地から始める。
「ガウガウ! ガウガウ!」
リズミカルにガウガウ言ってご機嫌なフレアは教えられた通りに苗木を植えていた。
不安は俺の取り越し苦労だったのかもしれない。
近くの整地が終わる頃にはフレアも用意されていた苗木の1割を植え終わっていた。
この調子ならおやつの時間までくらいには終わりそうだ。
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