第20話 人間じゃないよね?
食べ始めてすぐにストレートな質問が飛んでくる。
「ねぇ山内君。あの女の子2人は山内君の知り合い? 随分、仲がいいみたいだけど」
「まあ……。うるさい方は夏希っていって俺の幼なじみで、赤髪の方はフレアっていって……その……迷子の北欧人……かな」
「北欧人? 冗談だよね?」
「冗談ではないけど」
「だって、あのフレアって子の見た目……あれ、人間じゃないよね? 角とか尻尾あるし、パンツ丸見えだし」
「え? 角とか尻尾があったりパンツ丸見えだと人間じゃないのか?」
「気付いてなかったの!?」
「いや、まぁ外国ってよく知らないから、そういう人もいるものかと……」
「山内君って結構抜けてるのね」
確かに言われてみればテレビでも角や尻尾の生えた人間を見た事がない。あまりテレビは見ないけど。
それにパンツ丸出しの人間を人として見ないのもわかる気がする。平然と分かっていてパンツ丸出ししている奴は『人間』ではなく『変態』と呼ばれる事が多いから。
では、これからフレアの事を説明する時にどうすればいいものか。
キツネさんに北欧人って事にしておけと言われてるから北欧人? それとも、パンツ丸出しだから変態?
世間に疎い俺にはフレアをどう説明すればいいのか分からなくなった。
「そうなのかな……。それはそうと、もしかしてこれが聞きたくて相席を?」
「へ? あ……えっと……うん。山内君と仲がよさそうにしていたから……」
宇都木は気配り上手だ。クラスメイトの俺が変な奴と付き合っているじゃないかと心配してくれていたようだ。
「そっか。でも、心配しないでくれ。アイツらが勝手にくっ付いてきてるだけだから。ありがとな、心配してくれて」
「う、うん。……よかった」
ボソッと聞こえた『よかった』という言葉。やはり宇都木は心配していたようだ。
宇都木の心配を少しでも晴らしてやれたところで夏希とフレアがトレーを持ってテーブルへやってきた。
「ガウガウ!」
フレアが俺の隣の椅子に座ると夏希が声をあげる。
「あーっ! ズルい! あたしもアキトの隣に座りたい!」
隣に座りたいといっても俺はテーブルの端の方に座っていてフレア側しか空いていなかった。
そこをフレアに取られた夏希は俺のメシ乗ったトレーを押し退けて自分のトレーを置き、宇都木の隣の椅子を持ってきてフレアとは逆のスペースに無理矢理椅子を押し込んで座る。
「これでよし!」
「『これでよし!』じゃねぇよ。めちゃくちゃ狭いんだけど……」
無理矢理押し込んできたおかげで夏希と俺とフレアの椅子はピッタリくっ付き、それに座る俺は夏希とフレアに挟まれてとにかく狭い。
「フレア。横の椅子を退かして、もう少しそっちへ行ってくれないか?」
「ガウッ!」
フレアは両手をテーブルに付いて踏ん張っている。何故だか分からんが、どうやら動く気はないみたいだ。
「はぁ……わかったよ。もうこのままでいいよ……」
「いっただきまーす!」
「ガウガウ!」
2人が食べ始めまめると同時に宇都木が立ち上がる。
「ご馳走様」
「もう食べ終わったのかよ!?」
「うん。先に教室戻ってるね」
「ああ」
いつの間にか食べ終えていた宇都木は速やかに退席。何をそんなに急いでいるのかと思った矢先にその理由がやってきた。
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