第17話 ぷぷぷー
村瀬先生はこのままで授業をすると言っていたけど、色々と問題があった。
夏希はウチの学校の生徒じゃないから授業をちゃんと受ける必要もなく、その辺を理解しているのか横から俺にちょっかいを出してくる。
「あたしもアキトの膝に座ろうかなー」
「邪魔だからそこでジッとしてろ」
「何だとー! じゃ、絵しりとりしようよ」
「はぁ……お前は静かに出来ないのか……?」
「はい、次はアキトの番」
実に騒がしい。誰も絵しりとりをやると言っていないのに勝手に始める始末。
しかし、受け取ってもフレアが前を占拠しているから机にむかえない。
「ガウガウ」
フレアはフレアで俺の筆記用具を使って教科書やらノートに落書きをして楽しそうにしている。
「ここは幼稚園か?」
こんなに騒がしくても村瀬先生は無視。クラスメイトはチラチラとこちらの様子を窺ってはいるけど大きな反応はない。
触れられないのは有難いが、せめて床に座らされている冬樹には誰か少しくらい触れてやってあげてもいいのではないかと思った。俺は嫌だけど。
全く身が入らない授業を終え、俺は夏希とフレアを連れて職員室へ行く。
職員室へ着くと待ってましたと言わんばかりに村瀬先生が生徒指導室へ俺達を誘った。
椅子に座らされ、俺達の向かいに村瀬先生が座る。
校内は禁煙のはずだが、村瀬先生は内ポケットからタバコ取り出して火を付け、一口吸って大きく息と共に煙を吐く。
「で? その奇妙な格好の娘は誰だ」
「フレアの事ですか?」
「そうに決まってるだろ。夏希はハイハイしてた時から知ってるのはお前も分かってるだろ」
「そうですね。えーっと……フレアは何と言いますか……」
どこからどうやって説明すればいいか迷っていると村瀬先生は携帯灰皿でタバコを消して睨み付けてきた。
「口篭るな。簡潔にわかり易く言え」
「そんな無茶な……」
「早くしろ」
「分かりましたよ。……フレアは土曜日に俺に勝手についてきた迷子の北欧人です」
急かされて答えるとそれを聞いた夏希は大笑い。そして村瀬先生は携帯灰皿を握り潰して怒りを顕にした。
「ひゃひゃひゃひゃひゃ! 北欧人だってー! ひゃひゃひゃひゃひゃ」
「ワタシを馬鹿にしてるのか? 山内」
ありのままを口にしただけなのにこの反応。俺は何かおかしな事を言ったのだろうか?
「い、いえ、そんなつもりは……」
「バカだなーアキトは。北欧には揺れる椅子に座るババアしかいないんだよ? そんなのも知らないの? ぷぷぷー」
「バカはおめぇだよ。ババアだけが住んでるわけじゃねぇだろ。ジジイも多少は居るだろ」
「なんだとー!」
夏希が俺に掴みかかってきたけど、それはすぐに村瀬先生のアイアンクローによって引き離された。
「夏希、黙れ」
「痛たたたたっ! ごめん、静かにするから放して」
夏希を解放して静かになってから村瀬先生は再度聞いてくる。
「本当にワタシを馬鹿にしていないのか?」
「はい。俺自身、あまりフレアの事を把握してなくて……母さんに聞いて貰えば俺より分かると思います。友達の人が母さんと何とかするって言ってたんで」
「ふむ、なるほど。それなら話は終わりだ。教室へ戻れ。もう次の授業が始まっているぞ」
「あのぉ……夏希とフレアはどうすれば……」
「どうするもこうするも、来てしまったのだから今日1日は我慢して一緒にいろ。夏希はアホだから言う事を聞かないのはお前が1番知っているだろ?」
「はい……そうですね。では、失礼します」
生徒指導室から退出するとフレアが俺の手を引っ張って廊下にある柱の出っ張りを指さした。
「ガウ」
「なんだ? そこに何かあるのか?」
近付いてみるとその出っ張りに隠れるように宇都木さんが立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます