第6話 面白くなってきやがった
リビングの出入口から見える範囲には姿が見当たらなかった。
そうとなれば別の部屋に移動したと考えるのが妥当だ。
1階には廊下を挟んで和室と風呂場。2階には俺の部屋と両親の寝室、そして現在上京している6つ歳上の姉の部屋。1階と2階にはトイレが1つずつある。
どれも玄関から見える廊下を通らなければいけないが、夏希へ対応している時の俺は廊下に背を向けていたからフレアが廊下を通っても気付き難い。
そして夏希は廊下の方を向いていたけど、通せんぼをしていた俺で視界を遮られてフレアが通過しても見えていなかったと考えられる。
「フッ……面白くなってきやがった」
リビングから和室、そこから風呂場へと足を進めつつ考察と探索をしていると何だか推理物や刑事物の主人公になったような感じがしてテンションが上がってくる。
さしずめ探されているフレアは犯人に誘拐されたヒロインってところか。キャストは俺とフレアだけだから犯人なんて居ないけど。
強いていうならフレアが誘拐されたヒロイン兼犯人。つまり自作自演の事件って事になる……ふむ、この設定も面白いかもしれない。
色々と考えながら風呂場とトイレの探索が終わり、2階へと足を踏み入れる。
まずは階段を上がってすぐ右手にある両親の寝室。父親がそこで仕事をする事もある所為か広い部屋なのにごちゃごちゃと物が置かれていて狭く見える。
デスクの下やカーテン、ベッドの陰にクローゼットなど身を隠せそうな場所を探して次の部屋へ。
階段を上がったところで左に伸びている廊下。
両親の寝室から出るとまっすぐに伸びているその廊下の突き当たりはトイレ。左手は階段の吹き抜け、右手には奥から順に姉の部屋、そして俺の部屋となっている。
次に探索する部屋は俺の部屋だ。
ドアを潜っただけなのに半端ないくらいのリラックス感を覚える。やはり自分の部屋というのは安らげる場所。このままベッドへなだれ込んで昼寝でもしてやろうかという衝動に駆られるがフレアを放っておくのも気が気じゃない。
気を取り直してフレアを探す。
自分の部屋というものは少しの変化でもあれば気が付く。特に変化を感じなかったから、とりあえずクローゼットの中だけ見て自室の探索は終了してトイレへ。
結局、トイレにもフレアは居らず残された部屋は姉の部屋のみ。
「まさかここじゃないだろうな……」
姉の部屋は姉の許可なく入る事が許されているのは母さんだけ。
俺や父さんが勝手に入れば何かしらの制裁を受ける。前に俺は罰として過酷な奴隷生活を1週間させられた。父さんに至ってはどんな罰を受けたの分からないが、3日ほど夜な夜なすすり泣いていたのを俺は知っている。
そんな恐ろしい部屋にフレアが勝手に入った場合、母さんにフレアの世話を命じられた俺まで制裁の対象となってしまう。
普段は何かない限りは施錠されているから、施錠が外れていない事を祈ってドアノブに手をかける。
「……あ」
非常にマズイ事態。施錠は外れていてドアが開いた。
母さんが掃除する為に入って施錠し忘れたのか、それともフレアが鍵開けが得意だったのか定かではないが、ドアが開いたとなればフレアが中に居る可能性があるから探索はしないといけない。
探索をしないでフレアが粗相をしでかしたら俺まで怒られちまう。
ゴクリと唾を飲み、大きく深呼吸をした俺は部屋へと足を踏み入れる。いざ、鬼の根城へ。
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