少女

学校の屋上、手すりの向こう側。

足元はおよそ23cm。

私はそこに立ち、教師達クソどもと向かい合っていた。


「そんな事辞めろ!こっちに来るんだ!」


うるさい


「なんでそんな事をする!まだ人生は長いだろ!」


うるさい

知った口を聞くな。


「親のことを考えろ!」


「……うるさいよ」


「死のうとしてる人の気持ちなんか分かってもないくせに」


「分かろうとも、しないくせに」


「こうなるまで、何もしなかったくせに。」


「何もしなかったって……言ってくれれば動いたさ!」


「私は何度も、助けを求めたよ。」


「……でも、あんた達は、何もしなかった。」


「『あの人がそんな事する訳ない』って、」


「聞く耳も持たなかった!」


目が潤んで視界が歪み、声も不安定になっていく。


「――なのに今更、『言ってくれれば動いた』……?」


「ふざけないで。」


「いやしかし――」


「言い訳なんて要らない。口先ではなんとでも言える。」


「あるのは、何もしなかったという事実だけ。」


ここまで言ってなお、ぐちゃぐちゃと屁理屈をぬかすクソども教師達


「……もういいわ。」


なんだか1周回って冷静になってきた。

その時、

屋上の扉が開き、誰かが勢いよく出てきた。


「待って!」


友人だった。

私の、唯一の、友人。


「何……してるの……」


ぜえはあと、息も絶え絶えに聞いてくる。


そして、近ずき、私を抱きしめた。


「何、してるのよ」


泣いていた。


「…なんで、きたの」


「だって…友達でしょ?」


そう言って彼女はくしゃくしゃの顔でへにゃりと笑う。


…あぁ…ダメだなぁ……覚悟決めてたのに。涙も引っ込んだはずなのに。


「……ごめん。」


「もう、嫌になったのよ。」


「そんな事……言わないでよ。」


私は、悟った。

どれだけこの友人に迷惑を掛けていたのか。


もう、迷惑は掛けられない。


「……さよなら。」


友人を、突き放した。


「……え?」


後ろに振り向き、飛び降りる。


……何か、叫んでいる。

しかし、何を言って居るのかは分からない。


案外、落ちるまで時間がある。

死んだあと、何があるのだろう?


最早、現世の未練などない。




ふと、窓を見た。




こちらを見ている、少年がいた。




その少年の瞳を見た瞬間




私は




恋に落ちた。


今まで恋などロクにしてこなかったが。



声を大にして言える。私はこの人に惚れた。



この人が誰かは知らないが…この綺麗な瞳、ほうけた顔。全てが愛おしい。


この時だけ、まるで時間が止まっている様で。


ずっと…延々にこの時を過ごしたいと思ったが、まぁ、それも叶わず体は自由落下で下に落ちていく訳で。




へへ、そんな顔で見ないでよ。







後悔、しちゃうじゃん。









そして―――――











失恋した。

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