第13話 守れてよかった、と思います
目が覚めると、天井には煌びやかなシャンデリアが付いている。
私、戻ってきたんだ……よかった。
「……メルっ目が覚めたのか!?」
「っギル、バードさま……」
「よかった……! い、医者を呼んでくる。少し待ってて」
ギルバード様はここから離れようとしたから私は、彼の腕を掴んだ。
「行かないで……私の話、聞いてくれる?」
「ああ。分かった」
「ギルバード様、私この世界の神様に会ったんだ……その人が私を選んだんだって。それで私、戻るか止まるか選べって言われたの」
さっき神様に言われたことをギルバード様に言う。
「メルは、なんて答えたんだ」
「私はこの世界にいることにした。あんなに帰りたかったのになんでだろうね……なんか、ギルバード様と会えなくなるのは嫌だなって思ったの」
きっと今頃、私の存在はお父さんの記憶から消えただろうな。寂しいけど、私だけが覚えていればいい。
「メル……」
「この世界で生きていきたい。ギルバード様と一緒に、ずっと」
「ああ」
「この国の人のために何かしたい。ギルバード様を守りたいって思う」
「それは俺のセリフだと思うんだが……」
確かに、でも。
守りたいなって素直に思ったんだから仕方ないよね。
「ギルバード様、私この世界のこの国にいてもいいのかな……っ」
「……あぁ、勿論だ。いいに決まってるだろう」
「えへへ、うれしいなぁ……ギルバード様大好き」
それだけ言って私は、再び眠りについてしまった。起きた時、すっごく心配されたのはいうまでもない。
***
「……っ、メル様っ!」
目が覚めて数日後、私は本を読みながらベットの上で過ごしていた。ほとんどやってくるのはギルバード様で久しぶりに会う彼以外の訪問者はリー様だった。
「え!? リー様、きてくれてありがとうございます」
「そんなこと……っ」
「あっ、えっ! ウィリアム様!?」
え、やばい。私今、ネグリジェの姿だよ!
恥ずかしいんですけど……ねえ、もう。こんな姿で……!
「メル様、この度は助けていただき誠に感謝しています。本当にありがとうございました」
「ええっ、あ、頭は上げてください! 私はそんな大層なことはしていませんしっ」
「いや、大層なことをしましたよ」
「……の、ノア様!? それにギルバード様もっ」
なんでこんなに大集合なわけ……美談美女勢揃いで場違いな気がするんだけど。
「……ギルバード様、知ってましたよね」
「あー……そうだな」
「ギルバード様酷い! 私、今ネグリジェですよ。こんな皆様の前でこんな姿で……」
「メルはどんな姿でも可愛いぞ」
そんなこと今、言わないでよ。私今、顔真っ赤だと思う……もう本当に恥ずかしい。
「そういう問題じゃないんです……もう嫌いです」
「え、ななななんで!?」
「……リー様は同性ですしいいですけど、ノア様とウィリアム様は男性ですっ。恥ずかしいんです!」
ギルバード様は騎士服の上着を脱ぎ私の肩にかけた。
「すまなかった、配慮が足りず……お願いだから嫌いにはならないでくれ」
片膝をつけて深々と頭を下げた。
すると、その後ろから「ギルがめちゃくちゃ必死……」「堅物の必死な姿初めて見たかも」「印象が変わりました、メル様なんかすごいですね」と会話が聞こえてくる。
「ギルバード様っ、もういいですから……頭を上げてください」
「いや、メルに嫌われたら俺は……」
「わ、私はギルバード様のこと……大好きですから!」
私がそう言うと、ギルバード様は頭を上げてこちらを見た。
「……っ」
「ぎ、ギルバード様? どうかされました?」
「いや、俺の問題だ。……俺の姫は本当に可愛いなと思っていただけだ」
「そっ、そういうことは……!」
私は目を逸らすけど、後ろのお偉い方々がニヤニヤしておられる。もう、恥ずかしい……というか仕事は!?
「胸焼けしそうなくらい甘いですね、リー様」
「えぇ……私も驚きましたわウィル様。こんなに副団長が甘いなんて、見たことなかったもの」
そんなことを言ってリー様とウィリアム様はこの部屋から出て行った。この部屋には私とギルバード様、ノア様の三人だ。
「メル様、改めてお礼を言わせてください。もしあなたがいなかったら、国際問題に関わっていた」
「そうなんですか……?」
「えぇ。パーティーには、ウィリアム王子が我が妹・アイリーンの婚約者としてご参加されていた。ウィリアム様はエレットロニカ大国の王太子殿下です。そんな彼がこの国で万が一何か有れば責任は我が国にあるのです」
たしかにそうだよね。エレットロニカとはいい関係を築いていると本に書いてあったが、その国の王太子に何かあれば信用なんてものはなくなる。戦争にだってなるかもしれない。
「なので、本当に感謝しかありません」
「……いえ。私は別に。守れて良かったです」
本当に良かったと思う。誰も犠牲にならず、私が倒れたくらいで済んで……
「なので国王陛下から褒美を授けるということなのですが、何がよろしいですか?」
「褒美……ですか?」
「はい。爵位でも領地でも屋敷でも、なんでもいいとのことです」
なんでもって……ノア様が言ってるのは規模が違う。褒美を超えていると思うのは私だけなんだろうか。
「私は、褒美はいりません。ただ、大好きな人たちと平穏な生活が送りたいです」
あと、パンが作れれば……
「メルは、パンが作れればいいんだよな?」
「はい、それはもちろん」
「そうか。それなら、君が存分とパン作りができるように材料はこちらが確保しよう」
え、え?
「材料なら、消耗品だしメル様もたくさん作れて一石二鳥じゃないか?」
「えっ」
「よし、そうと決まれば最新の設備と材料を集めないとだな」
なんかノア様、楽しそうなんだけど。
「メル。ノアは、こうなったら止められないんだ……」
「そうなんですね、ありがたく貰おうと思います」
その後、ノア様は一人であーでもないこーでもないとブツブツ言いながら部屋を出て行った。
「じゃあ俺も行くから、じゃあ」
ギルバード様はそう言って出て行った。
「あっ、上着!」
追いかけて行きたいところだけど、着替えをしていないネグリジェの姿の私は追いかけることができず侍女に頼み持っていってもらった。
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