舞台裏2
「ギル、今帰り?」
「……あぁ」
ギルバート・セダールントは、ただ今公爵邸から王都の王宮騎士団寮へ戻って来ていた。
声をかけてきた男は伯爵家次男であるロバート。こいつとは同期であり同室である。
「デートはどうだった?」
「……デート?」
「王都に一緒に行ったんだろう?」
「ああ、言ったがあれは……デートなのか?」
ロバートは何かを呟くと「ギル、聞くけど……」と話し出す。
「昼飯一緒に食べたんだよな?」
「ああ……うん。屋台で焼き串と飲み物を一緒に食べた」
「そのほかにはどこか寄ったか?」
「仕立て屋に行った、彼女のドレスと帽子に宝石を購入した」
ドレスを着たメルは可愛らしかったな。普段から可愛いがそれが引き立っていて素敵な女性だった。
「……それは完全にデートだぞ、ギルバード」
「は? 俺と彼女は婚約者でもないし恋人でもないぞ」
「いやいやいや、男と女が一緒に出かけたらそれは立派なデートだ」
そ、そうなのか……知らなかった。
「まあ、ギルが女性に興味持つことができたならよかったよ」
「……可愛いからな」
「惚気か」
惚気ではないが。
「そういえば、王宮で広まってる噂知ってるか?」
「何がだ」
「聖女様を第二王子が探してるって話だぜ」
王子とは、この国の第二王子で王太子のジーク・エリザベス・エミベザのことだ。彼こそが“聖女召喚の儀”を執行させ、追い出した張本人である。その儀式でやってきた聖女様というのが、メル――双葉愛瑠だ。
「今更なぜ探しているんだ、追い出した本人でもあるだろう」
「ああ……まあな」
何を考えているんだ、あの王子は……。父さんから聞いた話では「聖女ではない」と言い放ち、「追い出せ」と言ったらしい。当然、メルはここがどこなのかわからないまま彷徨っていたらしい。
そりゃそうだ、目が覚めたら違う場所にいて初めて会った人に「いらない」と言われたんだから。
「だが国王が聖女様を隠してると聞いている」
今は、セダールント家で養女となり暮らしているが見つかったら彼女に自由はない。一生、王宮で閉じ込められながら暮らさないといけなくなる。
「俺らには関係ない話だがな」
「……そうだな」
メルがうちにいるのを知っているのは国王陛下に両親、俺だけだ。
「さ、寝よう。明日も朝早いんだから」
「そうだな、おやすみ」
俺は、灯りを消して眠りについた。
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