第7話
晩餐も当然一人で食べ、デザートの洋梨とイチジクのコンポートをお茶と共に頂いている時。執事のトレースがシルヴィアへと改まった。
「奥様、何か不自由な事などございませんでしたか?何かご要望などがありましたら、お申し付け下さい」
「えっと。私はずっと王宮で働いていたのに、突然長期休暇みたいになってしまった状態なの。
もしさせて頂けるなら、公爵家の簡単な事務作業というか書類整理とか、教えてもらえないかしら?」
「宮廷魔術師のお仕事は書類整理なども含まれているのでしょうか?」
「ええ、もちろん」
「かしこまりました、大変助かります。少しずつお教えさせて頂きます」
「ありがとう。お願いね。あ、それと旦那様ってそんなにもお忙しい方なの?」
おずおずと聞いてみた。屋敷内の事よりむしろそこが一番気になる。この質問に、あまり顔色を変えることのないトレースが、僅かに表情を曇らせる。
「そうですね。ここ最近特にお忙しくされております。申し訳ございません」
「そうですか。では、もう一つお願いしたいのだけれど、お茶の時間は手の空いている使用人と一緒にしてもいいかしら?」
「使用人と……ですか?」
シルヴィアの奇妙な提案にトレースは眉根を寄せる。
「ええ、食事は一人ですもの。お茶くらい誰かと時間を共有したいわ……」
「……かしこまりました」
突拍子のないお願いだったが、新婚にも関わらず帰らない夫を一人待つシルヴィアを不憫に思ったのか、トレースはしぶしぶ了承した。
お茶を飲み干し、寝室に戻る前に書庫へと寄ってルクセイア公爵家についての資料を手に取って、部屋へと持ち運んだ。
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