第4話
調印式は大聖堂にて行われた。
結婚式当日。纏う純白のドレスは繊細なレースと刺繍で飾られ、散りばめられた真珠や、薄桃の薔薇が清楚な印象の中にも華やかさを演出している。
首元には大きなサファイヤをメインに、ダイヤモンド、ルビーなど色取り取りな首飾りが掛けられている。
透けたヴェールから覗くシルヴィアの美しい銀色の髪が、光に照らされキラキラと輝く。会場中の人々は感嘆の息を吐きながら、妖精の如き花嫁に釘付けとなった。
夜会や社交の場など、ほぼ顔を出さないシルヴィア。まともに姿を見た事がなかった者は、彼女の容姿に驚きを禁じ得なかった。白磁のシミひとつない肌と、薄桃の頬。白のドレスはシルヴィアにとても似合うが、美しい銀糸の髪をヴェールで隠してしまっている事に、少し残念に思う者もいた。
順調に式が執り行われ、前ルクセイア公爵夫妻を中心に様々な高位貴族と挨拶をしたりと、普段社交に慣れていないシルヴィアにとってこれも中々に大変な事だった。
前ルクセイア公爵夫妻は邸には戻らず、新婚の息子夫婦に悪いからと式が終わるとすぐに領地へ帰ってしまった。
アレクセルに手を引かれ、金色の縁取りを施された二頭引きの白馬が引き入る馬車へと、乗り込む直後に彼は言った。
「申し訳ございません……実は仕事が入ってしまいまして……」
「あら」
「せめて邸まではお送りしたかったのですが、どうしても自分がいかなくてはいけないようでして……」
「分かりましたわ」
シルヴィアはにこりと微笑むと、アレクセルも少し安堵の表情を見せた。
「本当に申し訳ありません。彼女を邸まで丁重にお送りしてくれ」
御者に命ずると、シルヴィアを馬車へと乗せて邸へと進む馬車を見送った。
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