新婚なのに旦那様と会えません ～公爵夫人は宮廷魔術師〜

第3話

　アレクセル・フォン・ルクセイアは紺色の騎士服を身に纏い、美しい艶やかなワインレッドの髪と、神秘的な紫の瞳、通った鼻梁、形のいい唇。全てが完璧な配置と均衡を保ち、シルヴィアはアレクセルの事をとても美しいと思った。

　歳は22歳で、現在17歳のシルヴィアとは5歳差である。

（男性にこういった表現は失礼かもしれないけれど、綺麗な方だわ）

　整いすぎた美形とは真顔で黙っていると、とても冷たく感じてしまう事が多いが、アレクセルは穏やかな表情で話しかけてくれる。涼しげで甘い声も、優しい声色でとても聴き心地がいい。

　そして高い教養を身に付けている事が、すぐに分かる所作はとても品があり、優美で寸分の隙がない。

（これに皆騙されるわけね。こんなキラキラ美形に愛想よくされたら、そりゃあ免疫のないいたいけな令嬢たちはイチコロよね。殿下から教えてもらってなかったら私も騙されていたかも。怖い怖い……）

　と、恋愛偏差値の低いシルヴィアは一つ知識を得たのだった。

　夜会にはあまり積極的に出なくていいと聞かされていたが、前公爵夫人もそうだった。

　身体の弱かった公爵夫人は社交、特に夜会などはあまり顔を出さなかった。これについて、高貴な血が流れるルクセイア公爵家には、大した問題にはならないらしい。

　宮廷魔術師の仕事は基本週に1～3回までは公爵家から出勤する事を許され、それ以外は邸にて公爵家の女主人として過ごす事になる。

　というのも宮廷魔術師というのは普段は古代魔術の研究や独自の魔法の開発などが主であり、自分の研究室に1ヶ月ほど籠って出てこない魔術師などもいる。そして魔力を持ち、魔法が使える人間は希少なので国が囲っているだけでも価値があるとされている。

　その理由あって、他の公職に比べて何かと優遇される事も多い。

　シルヴィアの実家である伯爵家の両親も交えて話し合いをし、すんなりと縁談がまとまってしまった。その後も何度か会う機会を設けられたが、中々現実感が感じられないまま調印式を迎える事になった。