第3話 地図売りマジで本当、
「うわ、すげえ」
あれから二、三時間ほど馬車に揺られ、俺はプレノアにたどり着いた。
そこは思っていたよりも発展していて色んな人が歩いている。
「俺もここに来るのは初めてだがやっぱすげえな。これでも地方都市にすらならないんだから王都とかすげんだろうぜ」
これで地方都市にすらならないのか、じゃあ俺が住んでた名前も知らない街はどうなるんだ。
「取り敢えず冒険者ギルドに行かないとな。お互いそのために来たんだろ?」
「でも場所分かんないっすよ」
プレノアの詳しい地図も持ってないし街もなんか入り組んでて迷いそうだし。
「だからあそこにいる地図売りから買うんだよ」
「地図売り?」
「ああ、あそこにいるだろ」
俺はクレマンが指差した方を見てみる。
そこには通行人に紙切れを売っている男性の姿があった。
「こういう所には大抵地図売りがいるんだよ。基本あいつら以外から街の地図は買えないからな」
街の地図って看板とかに描かれてるかそもそもスマホで確認するとかそんな感じだったしこういうのは何か新鮮だな。
「地図二枚くれ。俺とこいつの分だ」
「はいよ。一つで銅貨一枚、二つで二枚ね」
俺とクレマンは地図売りに手持ちの銅貨を渡し地図を手に入れた、が。
「この地図汚くね?」
渡された地図は地図と呼んでいいのかすらわからない乱雑な物だった。
線はなんかぐにゃぐにゃだし文字は汚くて読めない。
美術の成績1の奴が書いたみたいな地図だ。
「まあ銅貨一枚ならこの程度だろ。俺なんか前銅貨三枚も出したのにこれ以下のやつが出てきたからな」
つまるところ俺たちは外れくじを引いたってことか。
「まあでも大まかな場所は分かるしこれに頼るしかねえな」
「やっとだ。やっと見つけたぞ」
あれから冒険者ギルドに向かって歩き出したのは良かったものの、手渡された地図は想像以上にずさんな物だった。
場所の名前が間違っているのは当たり前、存在しない道が記されていたり逆に本来存在するはず道が記されていなかったりとそれはそれはクソだった。
「畜生、評価星一以下だろこの地図」
おかげで俺とクレマンは慣れない街を三時間もさ迷う羽目になった。
「取り敢えず早いとこ登録して休みたいな、俺もクタクタだ」
道中体力には自信があると豪語していたクレマンも流石にこたえたらしい。
「これが冒険者ギルドか」
冒険者ギルドの外装はかなり立派で入り口のドアは何故かやたらでかい。
「にしてもでかいな。東京都庁みたいだ」
「なんだそれ」
「変形する古代兵器だ」
「?まあいい。さっさと入ろうぜ」
俺の言うことにいまいちピンとこなかったのかクレマンは何も言わずギルドの扉を開ける。
扉の向こうは酒場のようになっており、剣や弓を持ち鎧に身を包んだ冒険者達が食事や談笑を楽しんでいた。
「おい、見てみろよ二コラ。結構女がいるぞ」
冒険者は圧倒的な男社会かと思えば女性の姿も結構見られる。
聞いた話では弓や魔法は女性の方が扱いが上手いらしく重要な戦力になるそうだ。
「ここで成り上がって俺もモテモテだぜ!二コラ、早速登録しに行くぞ!」
「あ、ちょっと」
やや興奮気味のクレマンが俺の右腕を掴んで受付カウンターの方まで連れていく。
「登録したんですけど」
「はい、お二人ですか?でしたら順番にこちらの水晶に触れてください」
受付のお姉さんはカウンターの奥から占いでもするかのような立派な水晶と紙を持ってきた。
「よおし、まずは俺からだな」
クレマンが自信満々にその水晶に触れる。
すると水晶は突然青く光り出し、手前にあった紙に何やら文字を書き込みだした。
「ミッシェル=クレマンさん。体力と腕力が凄いですね」
それを聞いたクレマンは嬉しそうに鼻の下を指で擦った。
「次はお前だぜ二コラ」
いよいよ俺の番だ。
ていうかどうすればいいんだこれ、取り敢えずクレマンみたいに触れてみるか。
「お、なんか光り出した」
光り出した、光り出したけど何かおかしい。
さっきクレマンが出した光をLEDとするなら俺は豆球くらいしか光ってない。
「ニコラ=ドゥ=セラフィンさん。あれ?おかしいですね」
「何か問題ですか?」
「いえ、ただ能力値が見たことないくらい低いもので。不具合でしょうか」
それ多分俺がくっそ弱いからだと思います。
日本でぬくぬく平和に育ってきた俺と多分デンジャラスな生活を送っていたクレマンとでは比較にならないだろうし。
「大丈夫です。あってます」
本当は全然大丈夫じゃないしあってないと思いたい。
「ではお二人とも登録させていただきますね。こちらが冒険者カードになります。身分証にもなるので紛失しないようにしてください」
受付のお姉さんは冒険者カードを指差し説明を始めた。
「こちらが冒険者ランクになります。能力に応じて上がっていきますが、A以上に上がるには試験を受けていただく必要があります」
冒険者ランク、俺の欄にはDと書かれている。
「あの、Dランクってどのくらいですか?」
「最低ランクですね」
クレマンのカードをこっそり見てみるとCと書かれてあった。
こいつでCなら俺がDでもなにも可笑しくないな。
「それでは登録が完了しましたのでこれからお二人は冒険者ギルドの一員となります。くれぐれも問題を起こさないように、節度を守って活動してくださいね」
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