第35話(後輩の鍛え直し)

ーーリュウとアキは南木曽峠へ向かった。憲一郎は組織に連絡した。ヤコが在籍している組織だ。内閣情報調査室と呼ばれるインテリジェンスの組織。憲一郎は組織の中からアナザーシープへ行ける者を送り込むよう通達をする。目的はタニア国王の殺害だ。しかし、手間取る。リュウほどにアナザーシープで活動出来る者はそう居ない。ほぼ初陣に近いヘッポコ部隊が組織されてアナザーシープへ送り込まれた。


ーーリュウとアキが南木曽峠に着くと、いつも通りにエントリーして順番を待つ。すると、アツシも滑りに来ていた。アツシはハチロクをGTRの隣に停めて降りる。


「稲葉先輩、おはようッス。あれ、パン屋のちゃんねーも一緒ッスか」

「おは。ハチロクのパワーアップしたか?」

「改造屋と色々相談してスーチャー付けましたよ」

「そう来なくっちゃ。後はクラッチ蹴りをマスターする事だな」

「ムズいッス」

「じゃあ手本を見せよう。アツシ、ハチロクの助手席に乗って」

「南木曽峠のドラゴン直々のレクチャー。しびれるッス」

「アキはハチロクの後に着いてきて」

「分かったと。ゾクゾクするけん、楽しみ」


リュウはハチロクの運転席に乗り込み、峠を下っていく。そして、アツシに色々と手解きをする。


「クラッチ蹴りを難しく考えるな」

「俺、サイドドリに慣れちゃって。出来るかな~」

「ドリフトは練習すれば誰にでも出来る遊びだ。大丈夫、アツシにも出来るようになるさ」


リュウは5連コーナーを下った所でスピンターンをする。アキもインプレッサをスピンターンさせてハチロクの後ろに着ける。信号は青。リュウはハザードを消してスタートした。


第1コーナー。リュウはコーナー手前より更に手前でクラッチを切り、エンジンを吹かせてステアリングを切り、ややゆっくりクラッチを繋げた。すると、リアタイヤが滑り出してカウンターを当てる。


「今のが練習タイプのクラッチ蹴りね」

「一気にガツンとやらなくても出来るんすね。勉強になるッス」

「次のS字を繋げるよ」

「マジッスか」

「円書きに加え、8の字の要領だ」


リュウはクラッチ蹴りでS字コーナーに入り、カウンターを当てて右にリアタイヤを流した後に一度アクセルを抜く。すると、今度は左にリアタイヤが流れた。そしてカウンターを当てる。


「スゲー。これがS字繋げ」

「次はグリップで行くよ」

「え? ああ、魔のコーナーすもんね」

「ぶつける訳にはいかないからな。軽量級、中量級のマシンはコントロール出来るか分からん」


グッググっとタイヤが道路を噛み、高速で曲がっていく。アツシは後ろを見る。


「パン屋のちゃんねー、ホントにFRすか? 速い!」

「アキは九州の峠やサーキットで腕を磨いたそうだ」

「くぅ~! カッコいい! 俺じゃ釣り合わねえ」

「諦めるな。いつか腕で落とせ」

「ラジャー!」


2台は最終コーナーを滑って、両サイドに駐車スペースがある直線で卍をやってそのままGTRの隣に停めた。


「二人とも凄いっすわ。これがドリフト」

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