第24話(新商品を試食)
リュウとアキは店の奥の調理スペースで新商品の試食をする。リュウはアキが考えたという異世界アナザーシープパンを食べてみる。見た目は青色の寒天で装飾されたコッペパンだ。リュウはジーっと見る。躊躇っている。
「食べて感想を教えてほしいとよ」
「お、おう」
リュウはがぶりと食べてみた。コッペパンの中身はつぶあんだった。
「どう? 有り合わせの材料で作ったから発展途上だと思うの」
「味は良い。美味しいよ。だが子供向けだな」
「もう少し甘さを控えた方がいいと?」
「大人をターゲットにするならね」
「万人受けしないと?」
「男の口だからそう思うだけかもね」
「なるほど、なるほど」
アキはメモを取る。その眼差しは真剣だ。
「うち、あの青いドレスをもう一度着たいとよ」
「潜入するなら次はなしだ。アキは向こうのお姫様と瓜二つのようだし。顔を変える魔法を使うか。いや、犬になるというのもありだな。そういやここの犬は?」
「2階にいるとよ。連れてくる?」
「いや、いい」
「可愛いとよ」
「そろそろ帰るね。新作のパンの名前、異世界アナザーシープでいいよ。問題なかろう」
「ありがとう、リュウ君」
リュウは藤原パン店で幾つかパンを買ってマンションに帰る。もう夕方だ。
リュウは部屋に入ると、ヤコが来ていた。
「ヤコ~、ヤコ~。パン買ってきたよ」
ヤコがキッチンから出てきた。
「あっ、良かった。これから回鍋肉でも作ろうかと思ってたけど。勿論、じゃがバターパンあるよね?」
「あったりまえ」
二人はリビングのソファーに座り、パンを食べる。
「「いただきます」」
リュウは何となくテレビを点けた。何回かザッピングしてると、ニュースに目が留まる。環境相が福島第1原発の処理水について、ぶら下がりで記者に突っ込まれてる。
『大臣、福島の汚染水が大幅に減ってるとの事ですが、海洋放出を容認したのですか?』
『汚染水ではなく〝処理水〟です。生態系に問題ありませんので』
ヤコはじゃがバターパンを食べながら言う。
「まさか異世界に棄ててるなんて言えないよね」
「だろうな。真実を言ったところで、精神科の閉鎖病棟に連れ込まれちまうと思うよ。そういや仕事は?」
「暫く休むことにしたの」
「そっか」
ヤコは蓄えがたんまりあるから多少休んだところで大して困らない。稼ぎはリュウと同じくらいだ。
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