第25話(訪問者)

リュウはアキを待つ。ヤコはその気ではないが。そろそろ来てもいい頃だ。すると、ピンポーン。インターホンが鳴った。


「来た来た」

「は~、眠いから早くしてよ」


ヤコが欠伸をする。リュウはインターホンのモニターを見ると、来たのはアキじゃなかった。マンションの1階に住む年上のあんちゃんだ。


「どうされました?」

『大家さん、ちょっといいかな』


リュウは玄関に行き、ドアを開ける。あんちゃんは神妙な面持ちをしている。


「どうされました? なんかトラブルでも」

「実は家族が増えます。いわゆる、内縁の妻ってヤツです」

「おめでとうございます。扶養者が増えても問題ないので、安心してください」

「ありがとうございます。実はそれだけじゃなく、こぶつきなんですわ」

「お子さんもって事ですか。うちは3LDKですから、ゆとりのある単身者からファミリー層までOKですよ」

「そうですか。大家さんには報告した方がいいかなと思って」

「マンションの住人全員を把握してる訳じゃないですから、こういう報告は助かります」

「それでは失礼します。おやすみなさい」

「おやすみなさい」


あんちゃんは帰っていった。すぐ後ろにはアキが居た。


「アキ、お疲れ様」

「今日は沢山お客さんが来て疲れたと。早くアナザーシープに行こ」

「ああ。入って」

「お邪魔しま~す」


リュウとアキがリビングに行くと、ヤコは邪険な態度になる。


「また来たんだ」

「来ちゃ悪い?」

「二人とも仲良く。ね? ね?」


リュウは板挟みだ。正直、ヤコよりアキのが戦力になる。


ヤコは冷蔵庫に行き、ウイスキーを取り出す。食器棚からショットグラスを2つ取る。


「寝室に行こ」

「ああ、分かった。アキはまたソファーで頼むよ」

「むう~」


アキがむすっとする。


「毛布持ってくるね」

「分かったと」


リュウは寝室から毛布を出して、リビングのソファーに戻る。アキはもう眠っていた。リュウはソッと毛布をアキに掛けて寝室に行く。ヤコが先に飲んでいた。


「俺にもちょうだい」

「うん」


ヤコがショットグラスにウイスキーをトクトクトクと注ぐ。そして、リュウにショットグラスを渡す。


「かんぱーい」

「乾杯。今日も綺麗だよ、ヤコ」

「浮気。許した訳じゃないからね」

「手厳しい」


二人はごくっとウイスキーを飲み干して、そのままベッドで横になる。スーっと寝付いた。

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