第9話(パン屋のオーナー)
リュウはトレーとトングを持って、じゃがバターパンを2つとマヨ明太子パンを1つ選び、レジに持っていく。アキが対応する。
「リュウ君、ありがと」
「これからもちょくちょく来るよ。俺がここのオーナーになる事は決定事項みたいなものだからさ」
「リュウ君って何者?」
「ただの地主の孫だよ。だからマンションのオーナーなんてやってる」
リュウは渋沢栄一で支払いをして、お釣を貰う。
「ありがとうございました。明太子パンはサービスね」
「こちらこそありがとう。藤原のおばちゃんにもオーナーの話をしといて。じゃあね」
リュウはパンが入った紙袋を抱えてマンションに戻った。部屋に入ろうとした時、鍵が開いていた。リュウは恐る恐るドアを開く。
「リュウ、お帰り」
「なんだヤコか」
ヤコはエプロン姿だ。リュウのために朝ごはんを作っていた。ヤコには合鍵を渡してあるから、すんなり入ることが出来る。
「なんだとは何よ」
「いやいや、泥棒って可能性もなきにしもあらずだ」
「こんな美人な泥棒は峰不二子くらいね」
「アハハハハ」
リュウは取り敢えず、笑っておいた。
「パン、買ってきたんだ」
ヤコはリュウが持ってる紙袋に目を遣る。
「なんか作ってくれてた?」
「特製オムライスよ」
「じゃあ、全部食べるよ」
「太るよ?」
「なんか疲れたからさ。栄養チャージ」
「まだ午前中だよ? 大丈夫?」
「色々あったんだ。さ、食お」
リビングのテーブルにオムライスが1つあった。デカデカとケチャップでハートマークが描かれている。
「ヤコは食べないの?」
「あんまり食欲なくて」
「朝食べないとリキへえんねえべ」
「じゃあ、パン食べる」
「おう」
リュウは紙袋からじゃがバターパンを取り出してヤコに渡す。二人は椅子に座り、手を合わせる。
「「いただきまーす」」
リュウはいつもの味を噛みしめる。ヤコは料理上手だ。
「ねえ、リュウ」
「何?」
「私、キャバ嬢を辞めて、あのパン屋で働こうかな」
「やめておけ」
リュウはアキの存在とかキスの件とか色々バレてしまうと思い、反対してみた。
「えー。リュウは私がキャバ嬢やってて不安にならないの?」
「信じてるから」
その一言にヤコは安心した。リュウは浮気してるのに。
リュウはオムライスを完食して、手を合わせる。
「いただきました」
「方言」
リュウはドキッとした。
「え?」
「ご馳走さまが標準語よ」
「そだっけ。アハハ」
「どうしちゃったの?」
「いや、何でもない。ああ、なんか眠くない?」
「確かに。私、昨日は4時間くらいしか寝てない」
「じゃあベッドで仮眠取りな」
「リュウはどこで寝るのよ」
「ソファーでいいよ」
「えー。一緒に寝ようよ。イチャイチャしようよ」
「仕方ないな」
リュウとヤコはベッドに入ると、イチャイチャする間もなく眠りに付いた。
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