第5話(ドリフトデート本番)

峠のドリフトは基本的に登りのみ。下りはリスキーだ。認可峠に来るドライバーは楽しくドリフトが出来れば良いと考えてるか、サーキット走行のトレーニングか。大まかにこの二種に別れる。


グリップ走行で感覚を掴んだアキ。リュウとアキはまた5連コーナーを下った所でスピンターンする。信号機は青。スタートだ。


リュウはGTRを加速させて、コーナー手前でブレーキング、クラッチを切る、ステアリングをインに切った。これを同時にやる。そしてアクセルを吹かし、クラッチを一気に繋げ、リアタイヤを流すと同時にステアリングのカウンターを当てる。クラッチ蹴りというきっかけだ。あとはアクセルとステアリングのコントロールでドリフトは出来る。


アキはリュウのGTRが四駆でないことを見抜いた。リュウはGTRの四輪駆動システム、アテーサETSを解除してある。R32型だけに許されたシステムが未完成が故にできる芸当だ。


「速かねぇ、リュウ君。でもうちも負けとらんよ」


アキもクラッチ蹴りでドリフトして、GTRにぴったり着いていく。やはり、インプレッサのが峠では分がある。


リュウは次のコーナーのS字を繋げた。慣性の法則だ。


「すごかねぇ。ガチ勢はリュウ君の方やん。そんなテクニック魅せられたら好いてしまうとよ」


アキはS字を繋げずに滑っていく。そして4つ目のコーナー。リュウがグリップ走行の時に減速した所だ。コース幅の割りにスピードを落とす。アキは見抜いた。ここが魔のコーナーだと。


「なるほど~。リュウ君、優しかね」


4つ目のコーナーはバンクがマイナスだ。つまりコーナーで外側に引っ張られるようにタイヤが滑ってしまう。ドライバーからは気づきづらいから知らぬ間にオーバースピードでコーナーに突っ込み、側壁にぶつけてしまう。アキはそこまで見抜いていた。


「危なかコーナーや。だからスピードを落としたやね」


リュウとアキは最終コーナーまで無事に滑りきった。二人は左側の駐車場に車を停める。アキはインプレッサを降りて、GTRの運転席側のウインドウをノックする。リュウはウインドウを開けた。

t

「リュウ君、すごかよ~」

「アキだってすごいよ。ゼロバンクの第4コーナーで無茶しなかったのに、全く千切れなかった」

「リュウ君がヒントをくれたからやけん。ありがと」

「あれで解ってしまうとはな。すごいセンスだ」

「フフフ」


ーーリュウとアキは休憩を挟みながら、3時間目一杯遊んだ。辺りももう暗くなってきた。タイヤの山ももうない。


リュウは真っ直ぐ帰ることにした。アキを飲みに誘ったが、寄る所があると断られてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る