第6話(キャバ嬢)
ーーリュウがマンション帰ってくる頃、ヤコ(ミロク)はドレスアップしてクラブトロピカルスイーツで接客していた。何年もご贔屓にしてもらっているバーコード禿げの社長が相手だ。
「今日はミロクちゃんにプレゼントがあるよ」
「何々~? 楽しみ~」
ヤコは嫌な予感しかない。社長はラッピングされたケージを脇に置いている。
「生後3ヶ月の柴犬だよ。ミロクちゃん、犬が好きって言ってただろ?」
「ごめん、社長。命は預かれないよ」
「やっぱりか。受け取らなくてもいいんだよ。ミロクちゃんは芯の通った子だからね。この柴犬は家で飼うよ。会いたくなったらいつでも来てね」
「うん」
「さあ、今日は飲むぞー。皆も飲みなさい。ワッハッハ」
ーー深夜2時。仕事を終えたヤコはタクシーで自宅に帰る。一軒家に両親と弟の4人暮らしだ。ヤコはタクシーから降りるなり、酒をリバースした。タクシーの運転手が心配そうに声を掛ける。
「大丈夫ですか、お客さん」
「大丈夫よ。シート汚してないよね?」
「ええ。吐くまで飲むなんて、キャバ嬢って大変なんですね」
「少し夜風に当たれば大丈夫だから。支払いはこのカードでお願い」
ヤコはタクシーの運転手にクレジットカードを渡す。ピッとかざして支払い完了。
タクシーは次のキャバ嬢を送るためにクラブトロピカルスイーツに戻った。
ヤコは自宅の庭にあるベンチに座り、タバコに火を着ける。
「ぷはー…………うんめ。キャバ嬢きちぃ。あのパン屋に雇ってもらおうかしら。リュウ起きてるかな」
ヤコは腕時計で時間を確認する。
「さすがに寝てるか。私も寝よ」
ヤコはタバコの火を携帯灰皿で消して自宅に入る。千鳥足だ。メイクをシートで落としてベッドにダイブした。
ーー次の日の朝。リュウは目覚めが悪い。昨日、アキと爆ドリして、その後に飲みに誘ったが断られた。仕方なく1人で宅飲みして眠りに付いたが、ぐっすりとはいかなかった。リュウは消化不良だ。
リュウは窓から駐車場を見る。アキのインプレッサが停まっていた。
「水平対向エンジンの音がしなかったな。サイレンサーか」
ドドッドドッドドッドドッーー! 水平対向エンジンのエキゾーストノートがした。
「じいちゃんのポルシェ911カレラGT3だ。俺、ちゃんと大家の仕事してるよな?」
リュウは急にドキドキしてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます