第13話

 信二と新花はお墓近くの喫茶店で食事をとっていた。話が暗くなりすぎることを危惧してパンケーキやサンドウィッチを大量につまんでいたが、それでも信二の表情は曇っていった。

「今思えば、あの椅子は愛歌を死に追いやるきっかけだったのかもしれない。それを運んでいたなんて酷い話だ」

 新花はナイフとフォークを置いて父を見つめる。

「愛歌は携帯をしばらく変えていなかったから、六破の連絡先もしっかり残っていた。あの日以来、六破から数行のメッセージが届くようになり、それからあいつはきっかけ屋という単語から俺たちの居場所を調べ上げでもしたんだろう。家に荷物が届くようにもなった」

 信二の目が瞬く間に充血していく。

「パパ、無理しなくても……」

「いいや、話すよ。話すと決めたんだ。しっかり伝えないと」

 信二はコーヒーをすすって姿勢を正した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る