第5話

 手鏡を持って部屋を徘徊する時約。

 鏡に自分の顔を映せば、自分の顔が映る。

 鏡にカレンダーを映したら、逆さになった数字が映る。

 自分の心を映せば、過去が少しだけ浮き出てくれる。

 いつ頃からか、数字が減っていく日々。それを平穏と表現する社会。まだやるべきことがある? 逃げている?

 鏡は答えを映してくれない。結局は自分だけを映す。自分が答えだと言わんばかりに。

 鏡についている白い何かの実はユラユラと揺れている。

 時約はコートを掴んだ。そのポケットに手鏡を入れ込み、外に出る。

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