第3話
う~ん…
どうなるんだろ…
多分,このまま意識無くなっちゃうかも。
取り敢えずまぁ座っておかなければ!
ラジオ体操が終わるくらいに
先生戻ってくるかなぁ.
それまで意識あるかなぁ。
足音?
「姫野!
これ履け!」
…
「先生,
お早いお戻りで…」
私,深呼吸まで辿り着いてないけど.
この両手上げたまま…
どうするの私…
誰に向けた笑顔か分からないけれど,
へらっとしながら
手をゆっくりおろした.
「運動?」
がっつり見られてる…
「動いておかないと…
寝てしまう事があるので.」
差し出された職員室のスリッパと,
予想外の速さと,
少し息があがった先生と.
「廊下走っちゃいけないんですよね…」
「時と場合による.
その上靴は履かせてちゃ駄目だと思ったよ.」
「この私の上靴.
先生は,どうされるおつもりですか.
見せて聞きますか?」
「見せて聞くよ.
事後の心配だよな.
その辺は姫野が困らないようにしたい.
この筆跡じゃ,ちょっとよく分からない.」
「あれですよね?
伏せろで,
心当たりのあるやつ手を静かに上げろ的な…」
「恐らく,それ.
手ぇ挙げるかな.」
「名乗り出ないと思うんです…
この上靴は処分されて,
うやむやになって…
もしかしたら繰り返しかもしれません.」
「暫く職員室のスリッパ履いていてもいいよ.
それに落書きする子はおらんでしょ.」
「なんか,それ,
あまり解決していませんよね…
先生.
この上靴知らないふりできませんか.
私,このまま泳いで尻尾掴ませたい.」
「これ…このまま過ごさせるの?
教師として,出来ないよ.
駄目駄目.」
「受け取っても私が要らないと思うものは
返したいんです.
差出人に.」
「やられたらやり返す?ば…」
「っそれ全部言わないでください.
色々と問題ですから.
でも,そう言ってしまったら,
した側と同じ所に堕ちるような
気がして嫌です.」
「あぁ.
何か姫野の中で算段がついてるの?
何か手伝える事ある?」
「知らないふりしてくれたら,
大丈夫です.
どちらの側にもつかなければいけないのが
先生方ですよね.
でも,どちらの側だけにはつけない.
他の先生方が色々言われたら,
姫野に考えがあるようなので見守っています
とお伝えいただけたら有難いです.」
「正直…
もう,その上靴脱がせてしまいたいんだけど.
目に余る.」
「見えるものを隠してしまっても,
見えないものが残るだけです.」
「うん…
しっかり育ってんな.」
「寝る子は育ってます.」
「困った時は,すぐ言えよ.」
そう言った先生に,
私は笑顔で,
「有難うございます.」
と言えた.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます