自由空間

               火山竜一(ひやま りゅういち)


これからは

自由になろう

どこまでも

どこまでも

自由になろう


まるで

岩にぶつかる

大きな波が

弾けるように

飛び出そう


生真面目な

雪の壁が

気紛れな大気の身震いで

一斉に崩れるように

乱れ落ちよう


鳥籠の

鳩のように

開いた蓋から

ククッと笑って

飛び立とう


時計を捨てよう

靴を捨てよう

鞄を捨てよう

帽子を捨てよう

手帳を捨てよう


つかんだものを投げ捨てて

背負ったものを振り捨てて

締め付けたベルトを外したら

陽光の中で

風に身を任せよう


蛇口は

開けたまま

命の水は

流れ

続ける


口から溢れ

部屋から溢れ

街から溢れ

国から溢れ

地球から溢れ


宇宙に流れ落ちるままに

無限の空間に広がるままに

永遠の時間の中で漂うままに

暗黒の星雲に溶け込むままに

無音の静謐に浸るままに


去るものは

追わず

放っておき

空っぽになったら抱きしめようぜ

真空を



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詩集 青銅の月 火山竜一 @nada1102

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