幼女7人と異世界で無双するはずだったワシ(元79歳オタク)、神の手違いで弱体化されてしまう。じゃが、色んな意味でもう遅い〜ワシも幼女になっとるし何コレ〜
第80話 アローヘッド・テイルウィンドとワンダリング・パイロット②
第80話 アローヘッド・テイルウィンドとワンダリング・パイロット②
「何なんですか! この小さいおじさんは⁉︎」
拓人の頭に刺さった矢を抜こうとアンが尽力していた時、彼女はその矢の上にいる奇妙な存在を見つけた。
「オヘ! オヘ! オヘへへへへへ!」
制服らしきものを身につけ、蝶のような羽根と豊かな白髭を生やした『小さいおじさん』は、アンを嘲笑うかのような鳴き声を発しながら、逃げるように空中へ飛び立つ。
「待ちなさっ……」
「かいふく、はやくかいふくを……」
謎の生き物を追おうとしたアンだったが、拓人の息も絶え絶えといった声を聞いて視線を戻す。
いつの間か矢は抜け、彼の頭からはゴポリと血が流れ出している。
「レジー!」
「おっけー」
拓人の頭を包むように、シャボン玉が出現する。数秒もすると傷は塞がった。
「……で、今のアレなに?」
「精霊……なのでしょうか? ともかく、アレが乗っていたからタクトどのの矢が抜けなかった……そう見るべきでしょうね」
──空を飛ぶ敵……ギフトどのもそうでしたが、アレは的が小さすぎる。【
「レジー、シャボン玉を使ってアレを落とせますか?」
アンはそう言って、ドノカ村方面へと飛び去っていく『小さいおじさん』を指差す。彼?は、そう焦る様子もなくマイペースにふらふら飛んでいる。アンのジャンプ力なら手が届きそうではあったものの、相手が無軌道な動きをしている以上、確実な手段を取りたかった。
「やってみる」
そう言ってレジーはシャボン玉を『小さいおじさん』の近くに出現させ、爆破させる。
──だが、衝撃をモロに受けたはずの『小さいおじさん』は、何事も無かったかのように相変わらずフワフワと飛んでいるばかりだった。
「無駄なことを。俺の『機長』は強くないが、どこまでも自由だ。気にいらねぇことは無視する。それがたとえ、物理的な衝撃であってもな」
ドノカ村の周囲に張り巡らされた柵の裏。そこに潜む利発そうな顔の男……ゴートーは思わずほくそ笑んだ。うまく、いっている。
ゴートーの言う『機長』……魔術としての正式名称は【
『機長』を乗せられるスペースをもつ全てのものは『機体』となり得る。一度宙を飛んだ『機体』は『機長』によって操縦され、目的地に着陸するまでフライトを続ける。操縦の精度は『機体』が小さければ小さいほど高くなる。
「兄ちゃんよぉ、気持ちよくなってるとこ悪いけど、油断はダメだぜ。兄ちゃん自身、さっきそう言ってたじゃんかぁ」
そして『機長』に対して最高の『機体』を提供するのが、柵の上から少しだけ顔を出しながらゴートーの隣で弓矢を構えている彼の弟……ヌスットの魔術【
魔術で特にこれといった特徴のない弓矢を作り出し、射った矢には追い風を吹かせることができる。ただそれだけのシンプルな能力。追い風を吹かせたところでコントロールが上手く効かないのが弱点だが、そこは『機長』が補ってくれる。
「わかってる……矢でつけた傷もすぐに回復されちまったしな。このまま持久戦の構えだ。少しずつ消耗させて、勝ちに行く」
「オーケー」
帰巣本能が備わっているのか『機長』はゴートーの元へと帰ってくる。第3射の準備は、すでに始まろうとしていた。
「この攻撃が先回りしたアイスキャロルの臣下によるものならまだ良い。それなら『黒い石』を破壊すれば、おおかたのことは解決する。問題は──」
「この攻撃が純粋なドノカ村の住民によるものだったら、少し面倒……ということじゃな?」
エレンの見解と復活した拓人の合いの手に、一同は頷いた。
ジリ貧な状況を打破すること……それ自体も重要だが、彼らはその中で、できるだけ穏便な方法を選び取らなければならない。
拓人たちが教えを請いたいカムダール氏は若い身空でありながら、ドノカ村の元締めらしい。どのような理由があれ、不用意に村の住民を傷つけてしまうと良い印象は持たれないだろう。
「あたしは後者だと思うわ。慢心野郎のアイスキャロルはたぶん、アンタたちを捕らえるにはあたし1人でも十分だと思っていたはずよ。あたしが倒された、寝返ったと察して
そう言うライデンもまた、拓人と同じようにレジーのシャボン玉によって脚の傷を癒され、調子を取り戻していた。
「元臣下のお墨付きまでもらってしまったか……」
「これって結構ピンチだよね。ボクはもう回復が使えるほど魔力余ってないし、アンも……」
「はい。ですが仮に【
一同は頭を悩ませた……ただ『一頭』を除いて。
「打開策なら……あるわ」
口を開いたのはライデンだった。
「ライデンちゃん……どうすればいいんじゃ?」
「決まってるじゃない」
ライデンはアンガーの肉体の口角を上げ、男前な笑みを浮かべた。
「真っ正面から──カチコミに行くのよ」
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