幼女7人と異世界で無双するはずだったワシ(元79歳オタク)、神の手違いで弱体化されてしまう。じゃが、色んな意味でもう遅い〜ワシも幼女になっとるし何コレ〜
第68話 アンガー・サンダーボルト② 秘密があるはずなんだ
第68話 アンガー・サンダーボルト② 秘密があるはずなんだ
「……鍛え上げられた体。身体的には戦闘経験豊富に見える。アンの槍が刺さっても大して根を上げないところを見ると、実際タフだ」
「お、おい」
「戦闘狂ではないが、衝動的で
「エレン?」
拓人とエレンの二人は、アンとレジー、そしてアンガーからは少し離れた草むらで身をかがめながら状況を見守っていた。
それはアンたちの足手まといになることを避けると同時に、先ほどのように大槍の標的となる事態から逃れるための行動だった。
「……すまない。観察に夢中になっていた」
【
「もしかして、また『虫食い』状態になっとるのか?」
「……見てもらったほうが早い」
そう言ってエレンは、拓人の目の前に光の膜を展開した。
魔術名【 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤ 】 術者( ㅤㅤㅤㅤㅤ )
・術者本体は(ㅤㅤㅤㅤㅤㅤ)と(ㅤㅤㅤㅤㅤㅤ)を全て引き受ける。
・( ㅤㅤㅤㅤ )を呼び寄せ、破損した箇所を修復する。
・( ㅤㅤㅤㅤ)は電力を消費することで超加速を得る。
「かろうじて文意が
「のう、エレン。そういえば【当方見聞録】は精霊なんじゃろ? 精霊は多少の自我や自由意志があるとレジーが言っとった」
拓人は光の膜を
「なら、コイツが悪意を持って文章を穴ぼこだらけにしとるという可能性は無いのか?」
「ない」
『あるわけねーだろ、ザコ。ぶち殺すぞ』
エレンは口で、彼女の精霊は光の膜の文章を書き換えて即答した。
「この口の悪さは何とかならんのか!」
拓人は怒りに任せて光の膜に向かってパンチした。しかし、触れるはずもなくすり抜け【当方見聞録】は当然痛みを感じない。
『HA HA HA. ノーダメージ。当たるわけねーだろ。脳みそ使えや』
「覚悟しとれよ【当方見聞録】。いつか絶対に、お前さんをエレンと同じような人型にする方法を見つけてやる。もちろん痛覚も付ける。それが成功した
『バーカ。んなことできるわけ……』
「それは面白そうだな。当方にも協力できることがあれば言ってくれ」
『えっ』
「だが、今はアンガー・サンダーボルトの魔術の謎について解明するのが先だ。少し間の抜けているところはあるが、なかなかの強敵であることには違いない。長引けば、こちらが押し負ける」
アンは武器をふるいながら、レジーはシャボン玉を巧みに使いながら彼女をサポートし、アンガーを上手く
だが、彼女たちの歯をくいしばるような表情からギリギリの戦いをしていることが、見ている者にはよくわかる。
「先ほどのアンガーの魔術の記録に表示を戻したまえ【当方見聞録】」
『ちょっと待て、我が術者よ。先ほどのあの発言は』
「早くしろ」
エレンの鶴の一声により、光の膜は先ほどのアンガーの記録を再度映した。
「当方がこの魔術を信頼している理由については、また今度話そう。今はこの記述が正しいと信じた上で貴君の意見を述べてほしい」
拓人は先ほど憎しみを持って睨んだ光の膜を、今度は注意深く食い入るように見つめる。
「この『( ㅤㅤㅤㅤ )を呼び寄せ』のところは(雷)とか(稲妻)が入るんじゃなかろうか? さっき実際にそうしとったし」
拓人は先ほどのアンガーと同じように広げた右の手のひらを天に突き上げる。
先ほどはアンガーが同じポーズをしてすぐに、彼の手のひらに雷が落ちた。そして次の瞬間、その手にはどこかに飛ばされたはずの大槍が握られていた。
「すぐ下の文章も『電力を消費することで』……とあるしの」
「当方も同じ考えだ。だが、そうだと仮定すると少し妙な文になってしまう。『(雷)を呼び寄せ、破損した箇所を修復する』……大槍を握っていないことは、あの男にとって破損している状態ということになる」
「確かに引っかかる言い回しになるのう」
「何か秘密があるはずなんだ。彼が当方に向かって槍を投げたのは、きっと『知られたくないこと』があるからだ」
「知られたくないことなど誰にもあるんじゃなかろうか。現にワシだってそうじゃし……」
「それにしたって……だよ。アンが当方に敵の解析を頼んだ瞬間、彼は当方が情報系の魔術の使い手だと知り、慌ててあの槍を投げて口封じに走った。今さっきレジーにしたように、近寄って攻撃するほうが確実だったろうに」
確かにエレンの言い分にも一理ある気がした。アンに腕を貫かれ、力が十分に入らない状態でいきなり槍を投げたことを踏まえてもあの時のアンガーは冷静さを欠いていたと言えるだろう。
「『秘密』か……だとしたらワシはヤツの乗る馬に何かあると考えるな。『超加速』を得ているのはあの馬じゃ」
「確かにな。先ほど雷を呼び寄せた際、その直前で前ぶれのようにあの馬が鳴いていた。あれが彼の精霊、もしくはギフトの魔術で言うところの『武具』のような類の何かなのかもしれない」
「そうじゃな確かにあの馬がヤツの秘密の鍵……に……」
何気なく、アンたちの戦いに拓人は目を向ける。
戦場には、またあの稲妻が落ちていた。
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