第11話 苦労人、ふたり

「ほーん、転生と……七人だけの世界ねえ……」


 ギフトは拓人とアンの簡単な身の上話を聞き、消化しにくそうな顔をしつつも、事実として受け入れようとしていた。


「あまり、驚かれないんですな」


「いや、驚いてはいるさ。だが、そういうことが起こらんと説明のつかねぇことが多すぎる」


「そもそも、タクトさんの種族って絶滅してるんだよね」


 少年……ビットは衝撃的な事実をあっさり告げた。


「ええ……ワシってば絶滅しとったんですか?」


「1千年も前にね。小人エルフって言うらしいよ。たまたま覚えてただけで、ぼくも専門家じゃないから、学校の教科書や博物館でカピカピになった標本ぐらいでしか見たことないけど」


 ビットの所見に拓人は、げんなりする。転生者であるからには多少のはぐれ者扱いは覚悟していたが、まさか種族として世界にただ一人とは。まだ見ぬ家族や友人を失ったような気分だった。


「神様のほうで何か手違いがあったのかも知れませんね。おっちょこちょいなとこありますから」


「神様ってそんななのか? オレ様それを聞いてこの先の人生不安なんだが……」


「ワシもだいぶ不安……」


 二人のリーダーはほとんど同時にため息を吐き、互いに見つめあった。


「なはは……オレ様たち結構気が合うねえ」


「気が合うついでに、これからも仲良く……というわけにはいきませんかのう?」


「いかんねえ……いや、敵対する意思はないんだ。ただオレ様たち忙しくてさ、詳しくは守秘義務で言えないんだが……」


「相手には素性を喋るだけ喋らせて、みずからのことは一切秘密にしておく腐った根性、流石ですね」


「……っ! ルナ……いや、確かにそうだな。本当に申し訳ない」


 若干うつむいたギフトの表情にわずかながら、拓人は自己嫌悪の念を見た。その面持ちから、謝罪が決して軽々しいものではないことがわかり、ほんの少し彼の人間性が理解できた気がした。


「いえ、お仕事のことなら仕方がありません。ワシも前世は社会人やっとりましたので、お気持ちはお察しします」


「アンタ、良い人だな……代わりと言っちゃあなんだが、何かアンタらにしてあげられることはないか? 大した力にはなれんが、オレ様たちにできることならなんでもするぜ」


 その親身な言葉に、拓人とアンはそろって腕を組み、ほとんど同時に唸った。


「では、ワシから四つほど」


 多いな、とギフトは思ったが、自分から提案した手前それは言えなかった。


「アンはどうじゃ?」


「はい、とりあえず1つ……」


「なんじゃ、なんじゃ、ワシは後でええからとりあえず言うてみ?」


「あ、あるじどのから先にどうぞ」


「教えて欲しいのう。こっそり。こっそりでいいから」


「ええー、恥ずかしいですよう」


 いやそういうノリいいから、さっさと言ってくれよ、とギフトは思ったが、自分から提案した手前それは言えなかった。


「ほうほう……なんじゃ、ワシと同じじゃないか。ワシはアンとも気が合うみたいじゃな」


「そ、そんな恐れ多いです」


「ほいじゃ、一緒に言おか。せーの……」


 うぜえ、とギフトは思ったが、それ以上に。


「ワシらと……」


「私たちと……」


「「戦ってくださいませんか?」」


 面白え、と心が踊った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る