第4話 老人と【七人の……】②
ガサガサっ!
「ひいっ!」
前世で恥の多い生涯を送ってきた拓人は、反射的に物音のしたほうに土下座した。
冷静に考えれば謝ることなど無いのだが、言い知れぬ罪悪感が彼を無意識のうちに謝罪させたのだ。
「ごめんなさい。許してくだされ。もうしません!」
「あん? なんだこのガキ?」
「いきなり謝り出して、頭おかしいんじゃねえのか?」
「ふえ?」
情けない声を出しながら、拓人はおそるおそる
「まだまだよぅ、ちいせえちいせえガキじゃねえか」
「ま、俺たちの仕事じゃ老いも若きも関係ねえ。人間なんざ身ぐるみ
拓人は、少しずつこの男たちの
「ふむ、なるほど、なるほど」
「そこのおふたりさん」
「「あん?」」
「ちょいと──ワシを殺してみてくれんかの?」
「はぁ? 本当に頭がおかしいのか?」
本当に頭がおかしくなった……のではない。拓人は試してみたくなったのだ。神からもらったスキルが、どれほどのものなのか。
「盗賊なら武器くらい持っとるじゃろ? ほれほれぇ」
「や、やべえよ、アニキ。こいつマジでイかれてるぜ」
「問題ねえ。イかれてんなら、そういうのが好きなヤツに売ればいい」
「ン、まあ、それもそうだ。そんじゃ、お言葉に甘えて!」
弟分らしき男が、太ももに巻いたベルトから短剣を引き抜き、拓人に襲いかかる。
まずは、絶対防御の検証からだ。スキルがどのように発動するのか、と高を
そして……当然のように斬りつけられた。
「おぎゃー! 普通に痛い!」
悲痛な叫びを上げる拓人に対し、弟分らしき男は冷えた声で言った。
「ただし、殺してくれって頼みは聞けねえ。生きていて、かつ傷は少ないほうが
攻撃されたのは右腕、つけられたのはただの
「なんじゃ、この気分の悪さは……」
ふと下腹部に違和感がして、目を落とす。白いワンピースがいつの間にか
「お、おいおい……転生してからも
拓人は
「筋肉を少しばかり緩ませる毒だ。お子様にゃ、ちょっぴり
「ど……く……?」
自分には毒耐性があったはずだ、と拓人は訳が分からなくなる。そもそも、なぜ絶対防御は発動しなかった?
いまさらながらに、神に対する疑念がよぎる。
──まさか、
拓人は必死になって考える。だが、原因がただ単にドジった神の計算ミスにあることは、文字通り神のみぞ知るところである。
「なあ、アニキ。こいつどうするよ?」
「とりあえず、アイスキャロルの
拓人は衣服を脱がされ、くせえ、と
──ワシ、ヤバくね?
拓人の
──こういう
「あ……あ……」
ああ、なぜさっきイキってしまったのだろう。今さらながらに後悔しても、遅い。これが他人から
もし、表情筋が動くなら引きつるように笑っていただろう、とめどなく泣いていただろう。
荒みきった心を傷つけられるだけ、傷つけて……彼の精神世界に浮かび上がってきたのは、1つの死体だった。
それは、異世界転生に純粋に
──そうか、こいつはワシが殺したんだ。ああ、ワシ──いや、あのころは『オレ』だった。
──ああ、オレもこんな風に旅をしてみたい。人々を助け、世界を救う。かけがえのない仲間とともに心躍る旅を。
「せ……」
かけがえのない仲間に……なってくれたかもしれない者達の名を。
「ぶ……」
その名は……。
「ん……」
【
「腹が、立ちますね」
聞き覚えのない少女──と呼ぶにも幼い声がした。
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