第50話:球技大会当日。



 そして週も明け、いよいよ球技大会の日がやって来た。



 今朝はいつもより早くミカと2人待ち合わせ、例の公園に寄り道して、制服のまま木に登って、前日の天気予報の通りに晴れ渡った、どこまでも続く青い空と一つになった。

「綺麗だね」

「うん、空はずっと変わらず綺麗」

 この公園に行くのは遠回りと言うか、駅を通り過ぎて結構行った所に在るけれど、何故だか今日は来たくなって。

 自然に朝早く目を覚ました私はさっさと朝のルーチンを済ませてミカを呼びに向かったが、その道の中程で、私を呼びに向かって来ていたミカと鉢合わせた。

 そして態々言葉にして確認する事も無く、駅を通り過ぎて公園に着き、思い出の木に登ったのだ。

「街は、……よく見ると色々と変わっているんだろうけどね」

「そうだろうけどね。細かい所は変わっても、絶対的に変わらない事は有るわ」

「……うん、そうだね」

 そして私たちは、子供の頃の様に笑い合った。



 体育館に集められての先生による注意事項の伝達が終わり、1回戦が始まる。

 2つのコートでジャンプボールが行われ、体育館が躍動で満ちた。


 この伝達は学年毎の種目で使用する場所で行われた。

 バスケットボールをする1年の私たちは体育館を半分に区切ったこちら側、バレーボールをする2年の先輩方はそのあちら側、サッカーの3年生はグラウンド。

 バスケットコート2面を使って同時に2試合する事になっているのだけれど、私とミカは最初の試合には出ないので、写真クラブの撮影を代わって引き受けた。


 因みにこの学校の球技大会の在り方として“クラスの3分の1以上は参加させる”と云うのが有るらしく、1チーム5人編成の為1クラス3チームとなってしまったバスケットボールのトーナメント表は矢鱈と大きくなっている。

 卓球が毎年希望に上がっては却下されて行くのはこれが大きな理由だとクラス委員の子から聞いたけれど、一度に大量の試合を熟す光景を想像したら、少し愉快な感じがした。

 ……抑々、道具が足りないか。


 トーナメントと云うのはシードが無ければ1試合の必要チーム数の累乗チーム数が必要なのだけれど、1年生のクラス数は8クラスの為、24チームではバスケットボールで対戦する2チームの4乗の16チームよりは多く、5乗の32チームより少ない。

 その為に決勝までの山の左側は勝ち進めば5戦、右側は1回戦を免除されて最高4戦する様に分けられており、その左側には主に運動系クラブのメンバーが集まっているチーム、右側には文化系クラブで構成されているチームが集められている。

 運動系クラブチーム対文化系クラブチームの様な、結果が明らかな捨て試合が少なくなる様な配慮だと云う事だけれど、一番盛り上がる筈の決勝でそうなってしまうのは構わないのかしら。

 ……それに、チームメンバー全員が文化系クラブに入っている私たちのチームもそちらに割り振られている所為で、決勝まで行かなきゃ皆の意識に残れないじゃない。

 ………勝つのが目的では無いのに。


 又、チーム数が多くて通常の試合時間の40分では回らない為、半分の2クオーター、20分で行われる。

 ……とは言え、私の分も走ると言ってくれている皆の負担は軽視出来ないな……。


「……ユカリ、皆がどんな動きをするか、良く見ていてね」

「……うん、分かっているわ」


 カメラを構えながら耳打ちして来たミカに、顔を動かさずに返す。

 それに満足すると、ミカはもう一つのコートを撮影しに行った。

 …あっ、今、シャッターチャンス逃した。


 練習は頑張って来た心算だけれど、ミカたちも流石にバスケを専門にやっている人たちの動きまでは分からないので、相手の動きを読んで指示を出す為のデータが不足しているのだ。

 今コートに出ているチームのうちの一つが同じクラスのバスケットボールクラブのメンバーのチームなので、観察するには丁度良い。

 相手のチームはボール裁きの経験不足を動きで補っている感じが有るので、それ以外の運動クラブの人たちがメンバーなのだろう。

 ……このチームも健闘はしていたけれど、単純なドリブルやシュートのミスが重なり、次第に点差が付いていき、最後にはバスケットボールクラブメンバーのチームのワンサイドゲームになっていた。

 

 ……分かってはいたけれど、試合の動きが早い。

 私、ついて行けるのかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る