第49話:更なる団結。



「かっっっっっっっっっっっっっっこよかっっっっっったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 画面の向こうのカナコが、手足をジタバタさせながら感情を解放した。

 そこに並んで映し出されているアヤカとシオリも、うんうんと頷いて同意を示す。


「……次は現代文だけじゃないかも知れないよ?」

「……言うじゃない」


「何あのかっこいいの!」


 カナコの物真似にシオリが乗って、今度はアヤカが身体をクネクネさせた。


 彼女たちが言っているのは勿論、現代文のテストが返って来た時の、私とユカリのやり取り。

 私とユカリの2人が恥ずかしさで何も言えないのを良い事に、3人の悪ノリはさっきから続いている。

 テストの振り返りの名目で開かれた今日のリモート勉強会は、5人全員が入室するなり脱線し続けている。


「ねえねえ、いつの間にあんなやり取りするって打ち合わせしてたの?」


 カナコは尚も、目を輝かせながら訊いて来た。


「して無いわよ、打ち合わせなんて」


 隣に座るユカリが事も無げに言うと、画面の向こうの3人は、揃って驚きの声を上げた。

 ……そんなに驚く事かな?


「うん、して無いよ。満点を取った事を皆に言っても良いかって先生に訊かれたのも、答案を受け取る時だったし。……そもそも、あの時ユカリが近付いて来て一番ビックリしていたのは、多分私だったし」


 …何と無くそのままハグされるんじゃないかと少しだけ緊張したけれど、このユカリの事だしそんな訳は無く、熱い言葉と握手を交わすのに終わった。


「間違い無いわね」

「「「うぇぇぇ???」」」


 ユカリが私の言った事に同意をすると、アヤカたちはまた声を揃えた。


「あの時の空気なら行けそうだったし、そうした方が良さそうだったから。……ミカだったら、ちゃんと受けてくれると思ったしね」

「まあ緊張はしたけれど、昔一緒に読んだ漫画みたいなやり取りだったから。……アレで良かったのかな?」

「勿論。あれ以上は無いわよ」


 私の問いに、ユカリは微笑みながら答えた。

 ……ユカリにこう言って貰えると、やっぱり心が温かくなる。

 そんな私たちに、アヤカが「ちぇーっ」と唇を尖らせながら割り込んだ。


「良いよなー、2人は。分かり合ってる感じでさ。私たちなんて、蚊帳の外じゃん」

「あら? アレはあなたたちのお陰でも有るのよ?」

「「「えっっっ???」」」


 ユカリの返しが意外だったのか、アヤカとカナコとシオリはまた声を揃えた。

 確かに私にはユカリが考えている事は分かったりするけれど、それはユカリが私には分かり易く表現してくれている事も有るし、……私から言わせると、この3人の息の合い方も羨ましい。


「先生が中間テストの時のミカの成績に触れてくれた時、確かにミカの評価を見直した人は沢山居たわ。それでも、それを素直に表現していいのか分からなかった層が居て、その空気を変えたのは、間違いなくあなたたちの拍手だもの」

「私たちの? ……確かに拍手はしたけどさ、私たちのでも良かったの?」

「あら、良かったかどうかは、結果が物語っていると思うけれど? 少なくともあそこで皆が戸惑っているままだったら、私は行けなかったわね。空気が違ったから」

「うん、だよね! 丁度良く盛り上げてくれたと思ったよ!」


 ユカリの説明に私も続けると、アヤカも、カナコも、シオリも、凄く嬉しそうにしてくれた。


「私、皆の事はミカとはまた違う形で信頼しているのだけれど、それじゃダメ、かな?」

「「「良い!!!」」」


 ……ほら、息ピッタリ。

 ユカリは頬を真っ赤にしながら咳払いをした。

 皆、可愛い。


「兎も角あれで空気が変わったし、成績順が張り出されたら、もうあなたたちを安直にバカには出来なくなるわ」

「うん。球技大会で、もっと状況が変わると良いんだけどな」

「ええ、そうなってくれると良いのだけれど……。球技大会で私たちに出来る事は、良い試合をする事位だから、ねえ」

「じゃあ、取り敢えずは良い試合が出来る様になる事が当面の目標だね!」


 シオリが纏めたので、団結の意味も込めて、皆で「えいえいおー!」と手を振り上げた。

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