第15話:ミカたちの勉強会。



 その日は時間ごとに、ミカたちは4人で集まって前の授業の復習をしているらしかった。

 全員赤点を取っていたとは言っても、ミカの国語程では無いとは言え、それぞれちゃんとそれなりの教科は有るらしく、何とか教え合えている様だ。


 軽く胸を撫で下ろしている私とは違って、周りの目はそんな4人には少し厳しめの様だった。



「ねえ、ユカリさん。あの4人、授業が終わるごとに復習しているみたいですけど、どう云う風の吹き回しなのかしら」


 昼放課。机をくっつけてお弁当を食べながら、ナオさんがヒソヒソと言って来た。


「期末に向けてかな。いつまで続くやら」


 と、これはハルナさんの弁。

 思わず、フウと溜め息が漏れる。


「皆、頑張っている人を悪く言うモノでは無いわ。見守ってあげましょうよ」


 これは一応、言っておかないとね。

 棘が見えない様に、出来るだけニッコリと包み込んで。

 ……皆、ミカと私が仲が良かったのを見ていた筈なのに、口さがないんだから。


「……あ、ああ、そうよね。先ずは応援してあげるのが先よね」


 私の言葉に暫く固まっていたユズキさんは、何かを誤魔化す様にそう言ってくれた。

 ホノカさんも、黙ってコクコクと頷いている。

 ナオさんとハルナさんもそれに続いた。


「ねえ、もう少しテストが近付いて来たら、私たちも一緒に勉強会しない?」

「「「是非!!!」」」


 私が提案すると、3人声を揃えて目を輝かせた。

 ……この子たちも、決して悪い人たちじゃ無いんだよな。


 とその時、

「どうせなら、パソコンを使ってリモートって云う奴やってみない?皆のうちもパソコン有るっしょ?」

と言う、シオリさんの大きな声が耳に飛び込んで来た。

 教室中の視線が一瞬集まったけれど、当の本人たちは気付いていなさそうだ。

 ……リモートで何を?

 今日の流れだと、勉強会とかするのかな?

 ………スマホでだけど、私の方が先にミカと一緒にやっていたんだから。

 でも、パソコンでか。

 私もリモートのソフトを触った事は無いけれど、テレビとかで見る限り、スマホのアプリよりも良さそうな感じがした。

 帰ったら、見てみようかな。



 今日はちゃんとクラブに顔を出したミカは、部長に何度も頭を下げて謝っていた。

 部長も「今後きちんと出てくれるなら」と、それ程怒らずにミカを解放した。

 今日は過去の球技大会の時の写真をパソコン上で見て、先輩方がどう云う感じで撮影していたのかを皆で確認して終わった。



「ユカリさん、一緒に帰りません?」


 クラブが終わって帰り支度をしていた私に、隣のクラスで同じ写真クラブのレナさんが声を掛けて来た。


「え、……ええ、良いわよ」


 断る理由も無かったので、頷いた。

 本当はミカと一緒に帰ってリモートの事を訊こうと思っていたけれど、どちらにせよ学校を出る迄は話し掛けない方が良いと言われているし。

 ……流石に、それは過敏なのではないかと思うのだけれど、ミカが凄く私の事を思ってくれているのが伝わって来たので、受け入れる事にしていた。


 ミカは一瞬こっちを見たけれど、私がレナさんと話しているのを見て、笑顔になってAV教室から出て行った。

 ……それにしてもあの子、パソコンを持っていたかしら。

 小父さんにでも借りるのかな? 何てソフトを使うんだろう。



 夕飯を食べ終えた私は、自室に戻って机に向かってノートパソコンを開けた。

 ミカのお父さんにスマホアプリで「学校の友達とリモートを体験してみようって云う話になっているんですけど、何のソフトを使っていますか? お父さんにも訊いてみますけど」と訊いたら、直ぐに返事を送って教えてくれたので、取り敢えずそれをインストールして、開いて見てみる。


「……ふん、ふん、へー、こんな風になっているのね」


 少し見て、基本的な使い方は理解出来たんじゃないかと思う。


 ……未だちょっと早い時間かな。

 そう思って、取り敢えず明日の予習を一通り済ませてから、ミカにスマホでメッセージを送った。

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