第14話:ミカたちの話が。
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「あのさ、私、期末テストで良い点を取る為に、暫く勉強を頑張ろうと思うんだ」
久し振りに一緒に登校した後、ミカの発案で時間をずらして校門を潜って、教室でいつもの友達に囲まれて話していた私の耳に飛び込んで来たのは、アヤカさんたちに向けた、ミカのそんな宣言だった。
遠目に見ているだけでも、伏せたその顔が緊張に固まっているのが分かる。
……ミカ、よっぽど勇気を出したのね。
でも、大丈夫かと私も心配になってしまう。
あの子たちが若し怒ったりしてミカと縁を切ってしまったら、ミカは本当に孤立してしまうのだから。
……私が手を差し伸べる事も出来なくは無いけれど、それには私も全てを捨てなければならなくて結局はジリ貧だから、それはハッキリと悪手。
ああ、ほら、3人ともミカの顔をジッと見たまま、何も言わないじゃない。
私が思わず立ち上がり掛けた時、アヤカさんがミカの背中を思いっ切り叩いた。
……あれ? アヤカさんも、シオリさんも、カナコさんも、笑っている?
「ねえ、ユカリさん。今日のクラブ終わり、皆で図書室で勉強会しません?」
「え、ええ、そうね……」
「私、国語の問題が苦手で……」
どういう感情なのかと聞き耳を立てようとしたけれど、ホノカさんの提案に阻まれてしまった。
……なんて言い方は失礼か。
「期末テストまで1か月を切ったし、頑張らないとね」
罪滅ぼしの意識からか、そう言った私はいつもよりもニッコリと笑い掛けていた。
それにしても、ホノカさんは国語が苦手なのか。
どうやって教えたら良いのかな。
……前にミカが国語のテストの事を『パズルみたい』と言っていたのを思い出して、ついつい笑みが浮かぶ。
張り出されていた中間テストの結果を一緒に見た時は、ミカの5教科中4教科で赤点と云う結果にばかり目が言っていたけれど、国語だけは矢鱈と良かったんだっけ。
……私よりも。
……ううん、今はそんな思い出に頬を緩めている場合じゃない。
漢字とかは兎も角、文法とかは見れば分かるじゃないとなってしまって、どうして分からないかが分からないからうまく教えられないのよね。
だって、普段普通に使っている言語なのだから。
文章の中から指示個所を読み取る問題だって、読めば分かるのだし。
古文だって単語の意味さえ憶えて仕舞えばどうにでもなるし、漢文だって読み順を間違えなければ、古文と変わらない。
…………取り敢えず一緒に勉強してみて、ホノカさんが何を苦手なのかを見てから考えようかな。
それはさておき。
期末テストでは、4人揃って赤点と云う惨劇を回避してくれると良いな。
ミカは勿論、アヤカさんも、シオリさんも、カナコさんも。
そうすれば、クラスメイトたちも、皆を認めて……って云うのは、それだけじゃまだ足りないのかも知れないけれど。
先ずは、第一歩として。
……ううん、赤点を回避するだけの意識だと後々大変だから、いっそ一気に平均位、……あわよくば、トップクラスの成績を取ってくれれば……。
……と、幾ら何でもこれは望み過ぎね。
それに一気に成績が上がり過ぎると、カンニング疑惑が持ち上がるかも知れない。
それが冤罪だとしても、皆の中に禍根や疑惑の芽が残ってしまう。
だから。……今は、平均より少し下位が妥当な線かな。
でも、そんな事は考えずに、目標は高く頑張ってくれるのが一番なのだけれどね。
……ミカが昔教えてくれた様に、青い空は、どこまでも高く広がっているのだから。
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