第125話「秘奥義! ゼロ迫撃!!!①」

大掃除完了!

残りは『大型ごみ』だけ!!

 

振りかざしたディーノの剣先から放たれた豪風は、

抵抗する護衛役のゴブリンどもを残らずなぎ倒した。


これも作戦通りである。


なたのような重く鋭い風の刃により、

ゴブリンどもは、粉々の肉塊となった。


さすがにこれでは不死者アンデッドとしてよみがえり、『復活』は出来ない。


『シ、シ、シマッタァァァ~~ッ!』


ディーノのにより「はめられた」と知り、ゴブリンシャーマンは歯がみした。


形勢は完全に逆転した。


ディーノは不敵に笑う。

 

『ふっ、どうした? ゴブリンシャーマンよ、お前の力はそんなモノか?』


『クッソォォォォォ~~ッ!!! コゾォォ~~~ッ!!! ユルサァ~~ンンンッ!!! ブチコロス~~ッ!!!!』


完全に舐めていた相手から挑発され、

口惜しさと無念の思いから、再びゴブリンシャーマンが絶叫した。

 

魔法も物理攻撃も弾く強力な魔法障壁を盾に、

ディーノ達を一方的に踏みにじろうと思っていた。


全く同じ悔恨の念を、逆に味あわされ、屈辱が3倍にも増加する。


『コゾウ~ッ!!! コロシテヤル~!! カカッテコ~イッ!!!』 


憤怒の表情で吠え、挑発するゴブリンシャーマンを見て、

ケルベロスが苦笑する。


『で、どうする? 敵をほぼ殲滅したが、親玉が残ってるぞ』


『だな』


『うむ、このままでは決着はつかん。お前にあいつの魔法障壁を破る方法はあるのか?』


ケルベロスの問いに対し、ディーノは少しだけ間を置き、


『……ある!』


と、きっぱり言い切った。


ここで、ケルベロスが突っ込むのは当然である。


『ほう……どのような方法だ?』


問いかける、ケルベロスの言葉に対し、

ディーノはこれまた簡単に言い切る。


『魔法剣の奥義さ』


『ぬ? 魔法剣の奥義だと?』


『ああ、クロヴィス様から直接、俺の心に刻んで貰った。奥義を伝授して貰ったんだ』


『ううむ。ディーノ、お前に無駄死にをさせるわけにはいかない。……念の為に聞こう。その奥義とはどのような技なのだ?』


しかしディーノはすぐに技の名を、ケルベロスへ告げなかった。


己に気合を入れるよう、覚悟を見せたのである。


『ああ、俺は遂に本気を出す』


『ほ、本気?』


『ああ、今までセーブしていた力を惜しみなく出し切る。そして魔法剣の秘奥義、ゼロ迫撃を奴へぶち込む』


『ひ、秘奥義? ゼロ迫撃だとぉ!?』


『ああ、そうだ。ゼロ迫撃、もしくは零距離撃ともいう技だ』


『ゼロ迫撃、もしくは零距離撃……具体的に説明してくれ』


『了解! ゼロ迫撃は文字通り、敵に思い切り肉薄し、超至近距離にて高魔力の魔法剣を放つ一撃必殺の剣撃なんだ』


『何!? 思い切り敵に肉薄し、超至近距離で魔法剣を放つ一撃必殺の剣撃だと!』


『うん! 俺はまだ本気で……つまり全力で戦った事はない。さっきも言ったが、力をセーブしながら戦っていたんだ』


『ふむ、ディーノ。お前にはまだ余力はあると感じていたが……』


『ああ! ルイ・サレオンの魔法指輪が与えてくれる力にはまだ余力があると感じるんだ』


『な、成る程!』


『ああ! 勝つ為に、それを今、解放する』


『むう……』


『奴が使う強固な魔法障壁を打ち破るには、相手と顔をつき合わせるくらい至近距離で、強力な魔法剣を急所へ撃つしかない』


『うむ、そうだな』


『そうしないと先ほどのように軽々と弾かれ無効化されてしまう』


ディーノの説明を聞き、ケルベロスにはイメージがわいて来た。


「肉を切らせて骨を断つ」ということわざがある。。


危険を冒し、己の肉が斬られようとも、骨を断ち切る、

すなわち相手の急所ごと命を断つ!


ディーノが行使する『ゼロ迫撃』は、まさに!

そのことわざを具現化した秘奥義なのである。 


『成る程。理屈は分かった。しかしその技は……奴の魔法障壁に通じそうか? それにそこまで至近距離だと、お前も結構な危険を伴うぞ』


『承知の上だ。それと案ずるな、ゼロ迫撃の威力には裏付けがある』


『ほう、威力に裏付けだと?』


『ああ、ゼロ迫撃はいにしえの時代、世界中に起きた大過たいか「大破壊」で、クロヴィス様が、襲いかかる悪魔どもを数多あまた退けた技なんだ』


『な、何!? あ、悪魔を数多!?』


『ああ! 人間の技で、魔族の頂点に君臨する悪魔どもを、数多ほふったんだ』


『…………』


『俺には確信出来る! ゼロ迫撃を極めれば、不死といわれる悪魔さえ、肉体は勿論、魂をも粉砕し、消滅させる事が出来た! あいつに通じないわけがない!』


きっぱりと言い切るディーノは、唯一生き残ったゴブリンシャーマンを

鋭い視線で見据えていたのである。

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