第3話 存在

それから数か月が過ぎ、私の心に異変が起きていた。




「綾夏」



グイッと背後から肩を抱き寄せるようにされる。




「うわぁ!」

「相変わらずお前一人か?」




ドキッ


声のする方に目をやると、至近距離の慶一の姿。



「慶一ぃっ!?」




私は慶一を押し退けるように離す。



「近い!」

「別に良くね?」

「良くない!カップルじゃないんだし!」

「ええーっ!?何か冷たくね?」

「気のせいでしょう?」



「………………」



「あーっ!分かった!」

「な、何?」

「女の子の日!」

「違います!」

「じゃあ、カルシウム不足!」

「違うし!別にイライラしてるとかじゃないし!」



私達は騒ぐ。



「つーかさ、最近、どうなの?」

「何が?」

「好きな奴とかいたりするわけ?」

「な、何?急に!」

「いや…お前の恋愛話、浮上してないから」

「浮上って…芸能人じゃあるまいし。そういう自分はどうなの?」


「俺は別に」

「そうなんだ」

「一層の事、お前と付き合うかな?」




ドキッ


突然の台詞に胸が大きく跳ねる。




「いや…そんな良い加減で中途半端は辞めて」

「まーな」

「つーか、私にも選ぶ権利あるし!」

「そうだな」



私達は色々と話をしながら帰る。



そんなある日、慶一に彼女が出来た話を聞いた。


まさかの出来事に私は本当の自分の想いに改めて気付いた。



そんな私に告白してくる男の子が現れた。


私は、好きな人がいる事を告げるも、彼は、それを踏まえた上で付き合いたいと言ってきた。


再び断りを入れるも、彼は、じゃあ、一回出掛けて欲しいと言ってきた。


このままだと埒(らち)があかないと思い、出かける事にしたが、これが後に、誤解をうみ、慶一との距離が離れてしまう事になり―――――




ある日の事だった。



「綾夏、最近どうかした?」



数人の女の子の友達が尋ねてきた。



「えっ?」

「らしくないよ」

「そ、そうかな?」

「そうだよ!」

「久しぶりに出かける?」

「そうだね」

「綾夏には、色々お世話になりっぱなしだし!」




その日の放課後、私は友達と出かける事にした。




その日の帰り、友達と別れて帰っている途中、突然の雨に見舞われた。



「うっそ!聞いてないんだけど!?」



友達からもメールが入り、友達は迎え待ち。


私は傘でも買って帰ろうか、止むのを待つか考えていた所だ。


取り敢えず、様子を見る事にした。




しばらくして――――



「綾夏じゃん!」



名前を呼ばれ振り向く視線の先には



ドキッ



「慶一っ!?」



慶一は、傘を持っていたのか、それとも買ったのかは分からないけど、傘をさしていた。




「雨宿り中?それとも迎え待ち?」

「それは…」

「一緒に帰る?」



ドキッ


「えっ!?…いや…」

「あっ、でも、彼氏に誤解されるか…」

「いやっ!違うから!」

「えっ?」

「彼は違う!確かに告白はされたけど…一回出掛けて欲しいって頼まれて…私、好きな人いるし!」



「そっか。じゃあ帰ろうぜ!一緒に!」

「えっ?」

「ほら!あっ!でも…好きな人に誤解されたらかなわねーよな?」



傘を差し出すような素振りを見せたが傘を下げる。



「………………」



「どうする?」

「…それは…」

「…あー、もうっ!時間の無駄!」

「えっ?」



グイッと手首を掴み引き寄せる。




ドキッ



「帰るぞ!」



「………………」



「どうかしたのか?」

「えっ?」

「最近、らしくなくね?」

「そ、そうかな?」



「………………」



「悩み?」

「…ないわけじゃないけど…。で、でも!だ、大丈夫だから!」

「そっか」

「慶一は?」

「俺?別に」


「…そういえば付き合っている彼女いるんじゃ…」

「あー、別れた。つーか、別に付き合っていたわけじゃねーし。そう噂されてたからな〜」

「噂!?」

「そう。噂」

「そうなんだね」



私達は色々話をしながら肩を並べて帰るのだった。






気付けば


コイツ(慶一)の事を


好きになってた


冗談言って


バカしあって……


本当は


この時間が


ずっと続けば良いのに……


そう願うも


私は


一歩、二歩と


先には進めなかった……


仲が壊れる位なら


気持ちは伝えない方が良い


そう思っていた……

















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