第2話 初めての人間
それは、僕がゆっくりお昼寝している時だった。
«人間の生命反応を確認。直ちに起きて下さい»
?!えっ!どうしたの急に!
・・・あっそっか、近くに誰か来たら教えてとか言ったけ。
そして僕は重たい瞼を開き起き上がった。
そして後ろを向いたら目が合った。
誰とって?お察しの通り、人間ですよ!
彼女は少しだけ後づさった。
・・・そんなに警戒しなくても良いのに。
でもこの状況じゃあ確かに警戒するよね。
声を掛けたいんだけど、、そうだ僕声出ないんだった・・・
そんな事を考えていると
「あの・・貴方人魚で間違いない?」
正直『え?』と思った。
だって彼女から話し掛けてくれるとは思わなかったし、
でもさっき言った通り僕は声が出ない。
でも無視する訳には・・・そうだ!僕にはシストがいるのだ!
シスト!声出せるようにできる?
«可能です»
おぉ!よし!じゃあ声出せるようにしてくれ!
«了»
「・・・人魚ですが何か?」
あーーー!!もうちょい優しく返答が出来ないのか僕は!?
女性と話す事なんて無かったからなぁー
「人魚は1000年前に絶滅したはずです。」
「えっ、そうなんですか?」
「貴方知らないの?」
まって待って待って。
えーと・・1000年前に人魚が絶滅?んん?
どういう事かな??シスト分かる?
«すいません、よく分かりません»
えっ待って、シスト分かんないの?
«すいません、よく分かりません»
あーそうか。シストは俺の魂の欠片とか言ってたし、この世界のことが分かるわけでは無いのか・・・ならしょうが無い、聞いてみよっと。。
「すいません僕、先程生まれたばかりなのでこの世界の事がよく分からないんです」
「そ、そう・・分かったわ。まずは人魚の事についてね、まず貴方その格好のままだったら人魚と一目見てバレるから、後で人間になる練習をしましょう。
そして、人魚の絶滅についてなんだけどね・・言いずらい内容なんだけど、人魚の鱗は柔らかそうに見えて結構硬いのよ。だから戦争の武器や防具に使える、だから人々は人魚を捕まえては鱗だけを取り加工した。そのせいか、人魚はだんだん自死をし始め、絶滅したのよ。元々人魚は数少ない種族でね」
「え・・・・」
「ごめんなさいね。こう見えても私、結構ベテランの冒険者でね!色々知ってるのよ」
正直、イラついた。
人間って結局そういう奴なんだなって思った。
そして、人間の姿になれるよう頑張ろう!とも思った。
「あとこれは注意してね!」
「?」
「北にあるここからでも見える大きな赤い山があるでしょ?
そこには絶対に近ずかない事」
「?何で?」
「人魚が絶滅した時と同時に大戦争がおきてね、世界に亀裂が入ったの。
・・・余り詳しいことは言えないわ」
「そっか・・・」
「これからの事を考えて魔法とか覚えた方がいいわよ。練習付き合うから」
「!ありがと!」
«・・・・・・»
どうしたの?シスト?
«いえ»
?さっきから様子が変だよ
«すいません、よく分かりません»
(誤魔化した・・・)
「まず、手から炎を出すような・・そうね。ぶわー!てやってご覧」
「説明、雑ですね・・」
「はい!やってみなさい」
ムムム・・結構難しいな。
うーん『ぶわー!』ね。あの雑説明でわかる人いたら凄いな。
炎をイメージ炎をイメージ・・・・・あ、だんだん手が熱くなってきた!
この調子!ムムム・・
「お!凄いすごい!少し火が出てきてるわ」
「綺麗・・」
手から出てきた火はパチパチと周りを照らしていた。
もうそろそろ夕暮れだな。この人は・・
「もう遅いしここで止まる(野宿)わ」
「虫とか大丈夫何ですか?肌綺麗なのに」
「あらあら、お世辞でも嬉しいわ!私旅のベテランだし大丈夫よ!」
お世辞じゃないんだけどな。
この人、僕より可愛いのに!
«・・本気で言ってるんですか?»
どうしたの?シスト。
«いえ»
「よし!魔法は私得意だしあなたに教えるから。疲れたら教えてね」
「はい」
2時間後
うぅ・・・・体力が、頭が痛い!
魔法って精神力と体力を使うんだな・・覚えとこ。
にしても本当に色々教えて貰ったな。
簡単な魔法なら全部使えるようになっちゃった!
やっぱり1番難しかったのは精神攻撃だな。
説明が雑過ぎて1番時間かかった・・お陰で今は完璧につかえるよ!多分ね!
「ねぇ人魚さん貴方名前は?」
「え!僕ですか?」
・・・・そうだ。
僕は名前が無いんだった・・思い出そうとしたら頭が痛くなる。
「・・・・・無いです」
「あら?普通は名前を持ってる人なんていないはずなんだけど」
この人、痛いところ付いてくるな。
気のせいか僕を見る目が鋭くなった気がする。
流石ベテラン冒険者さん・・でも、、
「まずは貴方の名前を教えてください」
「私?私はエルナ・エリン。さ、名乗ったわよ。
誤魔化さないで自分の名前いってごらん」
どうやら彼女は誤魔化せないみたい。
でもさ、転生した事とか、正直言いたくないんだよ。
«偽名で名乗るのが宜しいかと»
流石シスト!と、言いたいところだが考える時間が無い。
「貴方もしも本当に名前長ないとしたら、喋れないはずよ。
名前は世界が貴方の存在を認めたと言う唯一の証拠だから。
でも世界から名前が与えられないと1時間で存在ごと消えるの。
けれど貴方は今喋れるようになっている、それって普通は有り得ない例外なの。
それに貴方は低級の魔法を全て今日2時間以内に覚えた。
普通の人は1ヶ月掛かるはずの魔法を全て習得した。上級魔法『精神攻撃』も」
冷や汗が流れた。
蛇に睨まれたカエルのように身体が動かない。
するとエルナさんは北の赤い山を見上げ、
「貴方これから厄介な奴に目を付けられるかもね」
と、言った。
本当にこの人、エルナさんが言ったら冗談に聞こえない。
「ま、それはともかく貴方が本当に名前無いのは分かったわ。
私眠いからもう寝るわ。明日までに偽名を考えときなさいよー!」
そう言い、ボソリと『おやすみ』と言い残し、お昼に建てた小さなテントの中にはいっていった。
よし!多分エルナさんはもう寝たし・・
シスト、尋問タイムだ。
言い訳無し、怒らないから正直にな!
まず、エルナさんが話しかけてきた時僕が『喋れるようにして』って言ったのは覚えてるね?そこからどうやって僕を喋れるようにしたの?
«世界のシステムにハッキングし、少し弄っただけです»
うんうん・・・って、分かるぁーーーー!!
世界にハッキング?!怖い!どんな事したらこんな怖い子になるの?!
でも心の片隅で少し嬉しい気持ちがあった事は絶対言わない。
でも本当に辞めてね。私のサポート役が居なくなったら大変なんだからね!
«・・・善処します。»
うん!
所で・・名前どうしよっか。シストは?何か案ある?
«リファエル・ナエカはどうでしょうか?»
おお!カッコイイ!決まりだな!
そして僕はゆっくり水に沈み意識を落としていくのだった。
朝
「おはようございますエルナさん」
「おはよーどう?名前思いついた?」
「うん、リファエル・ナエカだ。カッコイイだろ!」
「おお!ネーミングセンスがいいねー!」
「え、うん」
シストが考えたんだけどね。
「よし!今日は人型になる練習しようか」
「まだここに居るんですか?」
「駄目?」
「えーまぁいいのかな?」
「よし!練習するわよ!」
なぁシスト、人型って簡単に出来るの?
«人間を解析する必要があるので人間の血を摂取してください»
えっ、何それ。やりたくない。他の方法は?
«ありません»
えぇ・・・・
「あの、嫌だったらいいんですが血を少量下さい!」
「いいよ」
「えっいいの?!」
「別に良いけど聞く必要ある?」
そうエルナさんは言いながら人差し指の第1関節までナイフで切った。
「はい!頑張って飲んでね!」
「えっ。いやあの・・・・はい」
待って、飲めるの?血って。
美味しいんだったらまだしも僕吸血鬼じゃ無いし!
«飲んで下さい»
・・・シストからの圧が凄い。
飲めばいいんでしょ!飲めば!
僕はエルナの血が乗ったお皿をもち、震える手で一気に血を飲み干した。
・・・味がしない。
ただ、ヌメヌメしてて気持ち悪い!
ただ身体の中でシストが凄い速さで解析してるのが分かる。
«解析・・・終了しました。人型に擬態します。»
『えっ』と言う暇もなく身体全体が光で輝いた。
3秒ぐらいすると光が消えており、僕が人型で突っ立っていた。
・・なんかエルナさんが凝視しているが、なんでだろう?
僕は水面を覗き込む。
人魚の時と余り変わらないが、服と髪型が唯一変わっているとこかな。
服は人魚の時の服の上から黒いブカブカのジャケットみたいなものを着ていた。
下は膝ら辺の丈の独特な形をした薄い灰色のスカートを履いていた。
ちなみに髪型は下ろしていた髪の毛を2つに緩く縛った感じの髪型だった。
この髪を縛ってるゴムに付いている大きな石は何だろうな・・
深い青色だな、この色を見ているだけで落ち着く。
それにしても外見が美少女なのに中身が僕だからかな?
可愛いのに素直に可愛いと思えない!
「さっきからずっと黙り込んでどうしたの?」
「あっいや、、何でもない」
「ふぅん・・よし!人型になれたことだし朝ごはん食べるよ!」
「昨日は魚ばっかりだったから、ここら辺の木の実とか食べてみたいですね」
「そうねツツの実って言う果物があるから取ってくるね」
「はい、待ってます」
さてと、エルナさんは行っちゃったし、魔法の練習とかしてみるか?
誰か戦ってくれる人とか・・・は流石にいないな。
異世界だからもっとこうバーンと派手に戦いたいな・・・
にしてもエルナさん遅いな・・探しに行こ。
«左に進んだ先にエルナがいます»
シスト分かるの?!
«血を解析したので。»
へー!ありがとう!
右を暫く歩いた先で剣を打ち合う音が聞こえた。
正直僕は嫌な予感がした。
それを肯定するかのように傷だらけで剣を振り回しているエルナがいた。
そのエルナの視線の先にいたのは、
・・・人間だった。
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